人事領域では昨今、「エンゲージメント」という言葉を聞く機会が増えました。これは、企業と従業員の間で、確かなつながりや信頼関係が築かれることを意味します。
現在、企業としては従業員に対し、エンゲージがあがるように仕向けていきたい。そのために、取り組みを上司や同僚がケアする時代になりました。
エンゲージメントの低い組織には、マイナス要素ばかり!
そこで、各社員のエンゲージメントが高まる要因を把握して、可能な限り、その状況にもっていくことが求められています。
たとえば、「●●な取り組みは、すばらしい」と褒めたたえて承認欲求を満たすとか、学習機会を提供するとか......。新たな職場環境を準備するなど、涙ぐましい努力をする企業および職場が増えています。
ちなみに、日本企業の社員で「会社に貢献したい」という意欲の高い社員の割合はわずか数%とされています。
さらに言えば、日本企業における社員のエンゲージメントのスコアは長年、「G8」の中で最下位。世界的な企業力の低さを象徴するスコアですから、改善が急務なのは明らかかもしれません。
仮に、エンゲージメントが下がるとどうなるか?
生産性が下がる、離職が増えて、評価が下がる、自分に負担がかかるなど、マイナスの要素が多いのは明らかです。ゆえに企業は、社員にエンゲージメントの高まりを求めるようになりつつあります。
部下からも気づいた点の共有を、積極的に
では、企業の職場がエンゲージメントの高い状態を維持するためには、どうしたらいいか。
なにがしかの対策を打っておきたいものです。その対策のキーマンとなるのが、マネジメント層。個別に組織でエンゲージメントを下げる機会につながる発言や行為を行わないようにケアをすることができる、唯一の存在だからです。
ただ、組織を漫然と眺めていても要因はみえてきません。
そこで注目度が高まっているのが、個別の面談機会=1on1を活用。社員の成長を促すために、上司と部下がマンツーマンで定期的にミーティングをするマネジメント手法のことです。ミーティングで使用する時間は平均15分から30分程度。短時間の面談を高頻度で繰り返すと、効果を発揮します。
進め方として、部下からも気づいた点を共有する――つまり、対話の場として機会を提供することがポイントです。
これまで各企業が行っていた人事面談は、評価や目標などの確認やすり合わせが主たる目的でした。ところが1on1でのアジェンダは、「相互理解」「業務に関する悩み相談」「今後について」が中心です。
よって、コミュニケーション方法も比較的フランクな雰囲気で、部下の自発的な発言を尊重する「対話型コミュニケーション」で行うことを推奨されています。
すでに半数以上の企業が導入済みともいわれ、エンゲージメント強化のために必須の手段として定着しつつあります。
1on1を「受ける」人も、せっかくなので上手に活用を
であるならば、社員の側――つまり、1on1を「受ける立場」の視点から、自分にプラスを持ち込む方法を考えてみましょう。
こうした機会が提供されるなら、どうしたらいいか?
お互いの理解を深め、エンゲージメントも高まるように果敢に取り組むべきです。もちろん、上司からの質問にはしっかり回答する前提で、自分から会社や上司が考えている優先度の高いことは何か?質問してみてはどうでしょうか?
たとえば、「来年以降に向けて取り組んでいることは何かありますか?」とか、「我々も理解しておいた方がいい会社の方向性について、教えてください」と質問してみるのです。
ふだんは忙しく、しかも現場の部下たちは関心が低いと思って、上司が話してこなかったことを、教えてくれたりします。そうした機会に、相手の悩みが垣間見えたりします。
自分もこうした質問を上司のぶつけたことがあります。すると、新規事業に関する取り組みとか、内緒の人事に関する情報が入手できたことが何回もありました。
お互いの立場が違えば、見えている視点の高さも違います。ところが、その高い視点で眺めている情報を知ることができると、これまで理解できなかった会社の方針やスタンスに関して納得できたり、前向きに捉えることが可能になったりするものです。
結果としてエンゲージメントは上がることでしょう。せっかく、会社が提供してくれる機会なので上手に活用していきましょう。(高城幸司)