公取委、グーグルを調査へ...スマホの初期設定で自社優遇 欧米では巨大IT企業への規制強化が加速、日本も呼応

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   スマートフォンの初期設定で、自社のアプリを優遇させるなどしたとして、公正取引委員会が、米グーグルと関連会社2社を独占禁止法違反(不公正な取引方法、私的独占)の疑いで調査を始めた。検索サービス市場で国内トップシェアのグーグルの手法が、競合他社の排除につながる恐れがあると判断した。

   世界の検索サービス市場で他者を圧倒するグーグルに対しては、欧米各国が規制強化に動いており、日本も足並みをそろえた。

  • 公取委、グーグルを調査へ(写真はイメージ)
    公取委、グーグルを調査へ(写真はイメージ)
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他の検索事業者らを不利な状況に 公取委、市場支配力を不当に固定化する仕組みを懸念 グーグル、「選択肢を提供している」と反論

   公取委は2023年10月23日、グーグルへの調査着手を発表、併せて第三者からの情報・意見募集も始めた。

   公取委が問題にしているのは、大きく2点。

   まず、同社のスマホ基本ソフト(OS)のアンドロイドを搭載したスマホメーカーとの間で、アプリストア「グーグルPlay(プレイ)」搭載の許諾にあたり、検索エンジン「グーグルサーチ」や、ブラウザー「グーグルクローム」など自社アプリを標準設定(初期搭載)させ、アプリのアイコンの画面上の配置場所を指定する内容の許諾契約を締結すること。

   もう1つは、スマホメーカーとの間で、グーグルと競争関係にある事業者の検索アプリを搭載しないことなどを条件に、グーグルが検索連動型広告サービスから得た収益を分配する内容の契約を締結すること。

   こうした行為により、他の検索事業者らを不利な状況に追い込んだ疑いがあるとしている。

   10月23日の記者会見で公取委幹部は「グーグルの製品が広く使われていること自体を問題視するものではない」と強調し、「有力な事業者が市場支配力を不当に固定化する仕組みを作ってしまうと、イノベーションが起こりづらくなり、中長期的には消費者にとっても不利益となりうる」と、狙いを述べた。

   グーグルは「自分のニーズに合わせて端末をカスタマイズする選択肢を提供している」とのコメントを出す一方、公取委の審査に対しては「協力していく」とした。

   今後の調査は、グーグルが検索と連動した広告の収益分配による「囲い込み」について、明文の契約書だけでなく、契約を交わす際のやりとりから、違法性を解明できるかが大きなポイントになりそうだ。

米国の裁判では、iPhoneの標準設定への巨額対価が焦点

   グーグルの検索などを巡る「独占」問題では、J-CAST 会社ウォッチが「グーグル独禁法訴訟、審理始まる...問われる検索サービス『初期設定』契約の違法性、世界的な大手IT規制の流れに影響大」(2023年9月27日付)で報じたように、米国で司法省などが訴えた裁判が9月に始まったばかり。

   日本の公取委が問題にしているのと同様、スマホメーカーと、自社の検索サービスなどを標準設定させる契約を結んでいることが反トラスト法(独禁法)に違反するとしている。

   特に米国の裁判では、OSがアンドロイドでなく、独自の「iOS」を使うアップルのアイフォーンでも、同様に標準設定の契約をしていることが大きな焦点になっている。司法省は、アップルとの契約でグーグルが毎年80億ドル(約1.2兆円)~120億ドル(約1.8兆円)の巨額の支払いをしていると指摘している。

   さらに、10月27日には、同裁判の審理で、グーグルがこうした初期設定でスマホメーカーなどに支払う対価は、世界で2021年の1年間で263億ドル(現在のレートで約4兆円)になると、グーグル幹部が証言したと報じられた。

   同年のグーグルの検索連動型広告の売上高は1489億ドルで、その2割弱が、初期設定を確実にするためメーカーなどに対価として支払われたことになる。

   米国では、司法省とは別に、米連邦取引委員会(FTC)などが9月下旬、通販サイトの米アマゾン・コムが出品業者に対し、競合サイトで安く販売しないように圧力をかけるなどしているとして、反トラスト法違反で提訴するなど、巨大IT企業への規制の動きが強まっている。

   (J-CAST 会社ウォッチ10月28日付「米連邦取引委員会、米アマゾン・コムを提訴...独禁法違反の疑い 巨大IT企業への『攻勢』強めるバイデン政権、狙いは世論へのアピールか」参照)

規制への動きがはやいEU 23年5月、巨大IT企業に自社サービス優遇などを禁じる「デジタル市場法」施行

   米国よりさらに先を行くのが欧州連合(EU)だ。

   EUの執行機関にあたる欧州委員会は2017年、グーグルがインターネット検索市場での独占的な地位を乱用して自社サイトを優遇し、EU競争法(独禁法)に違反したとして24億2000万ユーロ(約3800億円)の制裁金を、18年にはアンドロイドを採用するスマホメーカーに対し自社アプリ使用を強要したとして、43億4000万ユーロ(約6900億円)の制裁金を、それぞれ科した。

   さらに、競争法ではネットを介した複雑なサービスの実態に対応しきれないとの判断から、23年5月に巨大IT企業に自社のサービス優遇などを禁じる「デジタル市場法(DMA)」を施行。9月、米グーグル(持ち株会社アルファベット)やアップルなど6社をDMAの規制対象に指定した。DMAは、重大な違反に年間世界売上高の最大10%、違反を繰り返すと最大20%の高額な罰金が科すと規定している。

今回の公取委調査の行方は? 過去の類似ケースでは、排除措置命令までは至らず

   このようなEUの動きに比べて、「米国は周回遅れ、日本は2周遅れている」(業界関係者)といわれる。公取委は23年2月にまとめた調査報告書で、今回調査対象にしたアプリがスマホに初期設定されることについての問題を指摘した。

   政府のデジタル市場競争会議も23年6月、スマホのOSなどを提供する巨大IT企業への新たな規制に関する最終報告を公表。それによれば、他社のアプリストアの搭載を認めないというアプリ流通の独占の回避のほか、検索について初期設定をユーザーが容易に変更できるようにすることの必要を盛り込んでいる。

   これを受け、政府はスマホ市場の新たな規制の法案を、早ければ2024年の通常国会に提出する方針だ。

   公取委の今回の調査は、こうした流れに沿ったものだが、実際に違反を認定し、グーグルに再発防止を求める排除措置命令にまで進むかは微妙だ。

   公取委はこれまでも、米アップルの課金システムやアマゾンジャパンの納入業者との取引をめぐり、独禁法違反の疑いで調査しているものの、排除措置命令までは至っていない。調査された巨大IT側が改善措置を打ち出し、それをもって調査を打ち切るという経過で決着している。

   ただ、グーグルは米国での裁判で徹底抗戦の姿勢を示しており、日本でも全面的に公取委に反論してくる可能性が高いとみられる。

   EUのDMA制定は、現行の独禁法の枠組みで巨大IT企業を規制するのには限界があることを図らずも示した格好で、公取委の違反立証のハードルは低くない。(ジャーナリスト 白井俊郎)

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