今回の公取委調査の行方は? 過去の類似ケースでは、排除措置命令までは至らず
このようなEUの動きに比べて、「米国は周回遅れ、日本は2周遅れている」(業界関係者)といわれる。公取委は23年2月にまとめた調査報告書で、今回調査対象にしたアプリがスマホに初期設定されることについての問題を指摘した。
政府のデジタル市場競争会議も23年6月、スマホのOSなどを提供する巨大IT企業への新たな規制に関する最終報告を公表。それによれば、他社のアプリストアの搭載を認めないというアプリ流通の独占の回避のほか、検索について初期設定をユーザーが容易に変更できるようにすることの必要を盛り込んでいる。
これを受け、政府はスマホ市場の新たな規制の法案を、早ければ2024年の通常国会に提出する方針だ。
公取委の今回の調査は、こうした流れに沿ったものだが、実際に違反を認定し、グーグルに再発防止を求める排除措置命令にまで進むかは微妙だ。
公取委はこれまでも、米アップルの課金システムやアマゾンジャパンの納入業者との取引をめぐり、独禁法違反の疑いで調査しているものの、排除措置命令までは至っていない。調査された巨大IT側が改善措置を打ち出し、それをもって調査を打ち切るという経過で決着している。
ただ、グーグルは米国での裁判で徹底抗戦の姿勢を示しており、日本でも全面的に公取委に反論してくる可能性が高いとみられる。
EUのDMA制定は、現行の独禁法の枠組みで巨大IT企業を規制するのには限界があることを図らずも示した格好で、公取委の違反立証のハードルは低くない。(ジャーナリスト 白井俊郎)