大阪・関西万博「建設費」めぐって繰り広げられた「茶番」 地元でも変わりつつある雰囲気...多額の公費を投じる国家イベント、どこに向かう?

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会場費増額は、大阪維新の会の「身を切る改革」の主張と矛盾感... 入場券収入で賄う運営費への懸念も根強く

   こうした「茶番」のような動きの背景には何があるのか。

   地元記者は「維新の手柄のはずだった万博が、逆に維新の存在意義を揺るがしかねなくなったのではないか」と指摘する。

   万博の誘致は大阪の経済活性化を狙った大阪維新の会がぶち上げ、維新と関係が良好だった当時の安倍晋三首相が後押しして2018年に決定した。

   しかし、2020年に会場建設費を最初に増額した後、新型コロナウイルス禍からの経済回復に伴う世界的な物価上昇が本格化。万博協会や行政が発注するパビリオンの中には、想定した価格では安すぎて入札が成立せず、パビリオンの設計を簡略化するケースも起きている。

   会場建設費も1850億円では足りなくなって増額に至ったわけが、物価上昇で庶民の懐事情も厳しくなっている昨今、「身を切る改革」を旗印に掲げる維新にとって、言行不一致と批判されかねない。

   万博を成功させるために会場建設費の増額は不可避だが、公費による負担が増えれば自らの主張との矛盾が浮き上がってしまうのだ。

   それでも万博が成功すれば、維新は成果を誇れるかもしれない。

   ところが、「万博の華」とも称される海外パビリオンは建設の遅れが指摘されている。主に入場券収入で賄う万博の運営費も「足りなくなるのではないか」(関西財界関係者)といった懸念が根強い。

   開催期間を延期できるデッドラインは過ぎており、開幕しても悲惨な状態ならば万博推進派に対する批判が高まるのは必至だ。

   会場建設費の増額をめぐって、吉村知事が万博協会と一線を画そうとするのには、「失敗の可能性もにらんで、今から予防線を張っているのでは」との見方が、関係者にくすぶる。

   開幕の500日前となる2023年11月30日には前売り入場券の販売が始まる。多額の公費を投じる国家イベントはどこに向かうのか。(ジャーナリスト 白井俊郎)

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