低価格で名を挙げたディスカウントスーパー「オーケー」(本社・横浜市)が都心一等地の繁華街に「殴り込み」だ。
2023年10月17日、日本有数の繁華街、東京都中央区の銀座に出店したのだ。ラグジュアリーブランドや有名老舗店が並ぶこの地で、200円台(税抜き)の弁当などを売っている。
銀座には最近、100円ショップなど低価格を売りにした店が増えている。背景にあるのは節約志向なのか。こうした動きが銀座を変えるのか。
地域の人、仕事帰りの人、訪日客など広く利用してもらえる店目指す 百貨店の「デパ地下より断然安い」
オーケーが出店したのは、銀座2丁目の商業施設「マロニエゲート銀座2」。地下1、2階。売り場面積は2フロアで合計約2000平方メートルに及ぶ、本格的な店舗だ。
販売している品目は、既存のオーケー各店舗と同じ価格の商品で、野菜や精肉、総菜のほか、定番の「299円弁当」も置いている。銀座には訪日客(インバウンド)も多いことから、土産用の菓子なども多数扱っている。
オーケーは現在、首都圏の1都3県に計144店舗を展開し、2024年には関西への出店も計画している。同社は「特売日」を設けず、「EDLP(エブリデー・ロー・プライス)」を掲げているのが特色だ。
ある流通アナリストは「割安な価格設定と品質の良さでリピーターを増やしており、今、最も勢いに乗っているスーパーの一つ」と話す。
銀座出店についてオーケーは「地域に住んでいる人や銀座に買い物に来る人、仕事帰りの人などに広く利用してもらえる店を目指したい」としている。
実際、オープン以来、多種多様な買い物客でにぎわっており、百貨店に買い物に来た人が「デパ地下より断然安い」と言って、大量買いしていくケースも少なくないそうだ。
近隣湾岸エリアの開発で居住者増え、「普段使いできる商品の需要強まる」
銀座ではここ1~2年、低価格を打ち出すチェーン店の出店が目立っている。
100円ショップのダイソーや作業服大手のワークマンなどが相次ぎオープンしており、いずれの店舗も大勢の客を集め盛況だ。
低価格店が増えている状況について、「節約志向のニーズをとらえようという動きの一環だ」と見る流通関係者は多い。
銀座は高級品、ブランド品のイメージが強い街だが、そこで働いている人は一般的なワーカーであり、最近の値上げラッシュの中で割安感を求めるのは他の地域と同じというわけだ。
足もとでは外食店のメニュー価格も上昇しており、「特に、働く人たちのランチ需要が取り込めるのではないか」と見る関係者も多い。
一方、近年の銀座を巡る事情として、同じ中央区や隣接する江東区などの湾岸エリアにタワーマンションが続々と開発され、居住者が増えていることがある。
こうした居住者にとって銀座は生活圏の中に入っており、「食品はもちろん、普段使いできる商品の需要は確実に強まっている」と話す関係者もいる。
銀座のイメージが少しずつ変わっていく可能性がある。(ジャーナリスト 済田経夫)