部下の働きがいと成長を願う心を、基礎に置くこと
これはより基本的なことですが、部下との相互理解を促進する行動の基礎には、部下の働きがいと成長を願う心を置くことです。
若手女性の手紙には、上司や先輩から受けた具体的な言動は書かれていません。それでも、彼女がつづった言葉――「仕事は厚意で与えられていた」「私に任せるリスクを承知で仕事を与えてくれていた」「自分に出来ることをきちんと見つめながら、人に感謝して働く、それってとても素晴らしい」「今、働いていてとても幸せ」といった内容からは、上司や先輩から受けた配慮への信頼感醸成が感じられます。
部下との深いコミュニケーションが大切な真の理由は、決して部下を意のままに動かすためではありません。部下が上司や同僚を信頼し、職場で安心してチャレンジできる環境を整えて、自分の仕事に邁進し、自ら働きがいをつかみ取れるように支援するため。
最後に強調しておきますが、部下の側から上司に配慮すべきとか、忖度すべきと解釈するのは誤りです。着目すべきは、上司が部下1人ひとりを交代のきく不特定多数の人ではなく、かけがえのない1人の人として大切に思い、親身に向き合う姿勢をみせたこと。だからこそ、信頼関係が深まったのです。
※「上司力」マネジメントの考え方と実践手法についてより詳しく知りたい方は、拙著『部下を活かすマネジメント「新作法」』(労務行政、2023年9月)をご参照ください。
※「上司力」は株式会社FeelWorksの登録商標です。
【プロフィール】
前川 孝雄(まえかわ・たかお)
株式会社FeelWorks代表取締役
青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授
人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業FeelWorksを創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「eラーニング・上司と部下が一緒に学ぶ パワハラ予防講座」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年働きがい創造研究所設立。情報経営イノベーション専門職大学客員教授、一般社団法人 企業研究会 研究協力委員、一般社団法人 ウーマンエンパワー協会 理事なども兼職。連載や講演活動も多数。
著書は『部下全員が活躍する上司力 5つのステップ』(FeelWorks)、『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)、『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、『50歳からの幸せな独立戦略』(PHP研究所)、『本物の上司力~「役割」に徹すればマネジメントはうまくいく』(大和出版)、『人を活かす経営の新常識』(FeelWorks)、『50歳からの人生が変わる 痛快! 「学び」戦略』(PHP研究所)等約40冊。最新刊は『部下を活かすマネジメント「新作法」』(労務行政、2023年9月)。