税法改正を伴う減税...予算措置だけでできる給付金に比べ、即効性劣る
ほぼまとまってきた減税・給付の仕組み、規模などをみておこう。
減税は納税額の多寡に関係なく一律の金額とする「定率減税」とし、所得税3万円、住民税1万円の計4万円、さらに扶養家族についても1人当たり4万円減税する。つまり、扶養家族が2人いる世帯なら12万円の減税になる。
他方、住民税非課税世帯の場合は、税金を納めていないから減税の恩恵はないので、一律7万円の給付金を支給する。
減税は自民党税制調査会で具体的な仕組みを議論して年内に決め、2024年の通常国会で税制関連法の改正案を成立させ、6月に実施する。24年度だけの1回限りとする方針だ。
ただ、課税世帯でも納税額が定額減税額に満たないと、4万円の減税を受けられない。こうした「隙間世帯」にどのように対応するかは、年末までに詰めることになる。また、自民党内には減税対象の年収を2000万円程度に制限する声もあるが、首相は慎重といわれる。
こうした施策の規模は、減税だけで3.5兆円、その他を含め総額5兆円とされる。22年度の所得税収は22.5兆円で、20年度の19.1兆円から3.4兆円増と、想定減税規模に匹敵し、これが「税収増の還元」という計算になる。
だが、政府・与党内にも、減税への疑問の声は少なくない。
船田元・衆院議員は「期限付きで小規模の所得減税の効果は極めて限定的。慎重であるべき」と述べている。専門家からも、「5兆円の所得減税は実質GDPを1年間で0.25%押し上げると試算される」が、「恒久減税の場合であり、期限付き減税の場合には(貯蓄に多く回り)その効果は半減し、0.12%と推定される」(木内登英・野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミスト)などの指摘がある。
減税は税法改正を伴うために実施が半年以上先になることから、予算措置だけでできる給付金に比べ即効性も劣ることは、広く指摘されているところだ。
それでも、「無理やり減税」に突き進む背景には、首相の苛立ちがあるとの見方が強い。
22年末、防衛費増額の財源に法人税などの増税方針を決定したほか、23年6月の政府税制調査会の中期答申のとりまとめでは、通勤手当などの非課税所得や退職金の税控除の見直しが盛り込まれ、「サラリーマン増税」といった批判が噴出した。
ネットでは首相の眼鏡姿を「増税メガネ」と揶揄する声があふれ、首相は苛立ちを口にしたと伝えられる。