米連邦取引委員会、米アマゾン・コムを提訴...独禁法違反の疑い 巨大IT企業への「攻勢」強めるバイデン政権、狙いは世論へのアピールか

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FTCは直近でメタ、MSも「標的」に バイデン氏が再選を目指す24年の大統領選への思惑も?

   今回の訴訟の背景には、米バイデン政権の思惑もあるとの見方が一般的だようだ。

   J-CAST 会社ウォッチが「グーグル独禁法訴訟、審理始まる...問われる検索サービス『初期設定』契約の違法性、世界的な大手IT規制の流れに影響大」(2023年9月27日付)で報じたように、FTCとは別に、米司法省などがグーグルに対し、自社の検索サービスを標準に設定(初期設定)してもらう契約を結んでいることが競争を阻害しているとした訴訟の本格審理が、今回のアマゾン提訴の直前に始まったばかり。

   FTCは20年にメタ(旧フェイスブック)を同法違反で提訴したほか、22年にマイクロソフト(MS)による米ゲーム開発大手アクティビジョン・ブリザードの買収の差し止めを求めた(MSについては裁判所が棄却)。

   一連の規制の動きは、前のトランプ政権から引き続くものもある。だが、特にバイデン政権は21年に発足して以降、巨大IT企業に批判的な学者や弁護士を相次ぎFTCと司法省幹部に登用しており、一連の訴訟は、そうした人事の当然の帰結でもある。

   とくに、FTCのリナ・カーン委員長は研究者時代の2017年に「アマゾンの反トラストのパラドクス」と題して、アマゾンのビジネス慣行の弊害を訴えた論文を発表して注目された「筋金入り」。カーン氏にとってアマゾンは、まさに攻略すべき「本丸」といえる。

   もっとも、政権側の思惑通り進むかは予断を許さない。

   前記の通りMSのゲーム開発大手買収の差し止めは却下され、メタによるスタートアップの買収差し止めも同様に却下されている。それでもバイデン政権が巨大ITを訴えるのは、世論へのアピールが狙いとの見方が多い。

   レーガン政権以降の新自由主義的な経済政策(レーガノミックス)で大企業寄りの政策が続いたが、ここにきて、労働者の生活防衛・向上への流れが強まっているのは、全米自動車労組(UAW)のストでも明らか。同じ脈絡で、巨大ITへの批判的な声は高まっており、提訴など一連の動きは、バイデン氏が再選を目指す24年の大統領選をにらんだものといえそうだ。

   米経済紙「ウォールストリート・ジャーナル」は日本語web版「アマゾン提訴、FTCの勝算は」(2023年9月28日)で、専門家の見方として、訴えの範囲は予想していたより狭く、「FTCが期待できるのは、せいぜいアマゾンの価格規定のわずかな変更、有料会員制度『プライム』の配送要件の緩和、そしておそらく検索結果の改善だろう」と報じている。

   政治ショーなのか、歴史的な独禁法訴訟になるのか、どちらにしても目を離せない。(ジャーナリスト 白井俊郎)

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