今後の中軸はリードジェンやデジタルイベントへ
アイティメディアは2024年3月期より報告セグメントを大幅に組み替えていますが、この理由について検討してみます。
旧セグメントの売上収益構成比は、「リードジェン事業」が35%で、「メディア広告事業」が65%。営業利益率も、メディア広告事業の37.1%が、リードジェン事業の28.3%を上回っています。
この数字を見ると、「アイティメディアの主力事業はメディア広告事業である。営業利益率も高く効率よく儲けることができているので、今後も広告事業に注力していけばよい」という判断になってもおかしくありません。
しかしアイティメディアは、今期から事業の中身に基づき、「BtoBメディア事業」と「BtoCメディア事業」に再編しました。これによって会社は、実は法人クライアントとのビジネスから収益の8割以上を得ていたということを可視化しています。
残る「BtoCメディア事業」とされた「ねとらぼ」などのネットメディアは、自社営業がほとんど不要な「運用型広告」で収益をあげており、クライアントへの営業が必要な「BtoBメディア事業」と性格を大きく異にしています。
コロナ禍では巣ごもり生活の中で、ウェブメディアのPVやUUは急増し、運用型広告による収益も大きく伸びました。アイティメディアの場合、2019年3月期と2023年3月期を比べると2.3倍に増えています。
しかし2023年に入り、運用型広告市場の競争激化により広告単価が下がり、コロナ禍の反動によるPVやUUの減少もあいまって経営が悪化。サイトの統合や運営休止、人員削減などのリストラを行っているウェブメディアが少なくありません。
アイティメディアの報告セグメントの見直しは、このような事態を適応するため、コロナ禍での「運用型広告バブル」はあくまでも「水物」ととらえつつ、デジタルイベントのリアル回帰も一時的な反動でしかないと判断し、安定したリードジェン事業を軸に経営基盤を強化するねらいがある、と見ることができるかもしれません。
もちろん、運用型広告ビジネスを完全にやめたわけではないので、市場が回復すればその恩恵を享受することはできます。しかし、当面は利益率の悪化に伴って「BtoCビジネス」を担当する部門の固定費圧縮は避けられないのではないでしょうか。(こたつ経営研究会)