ジャパンモビリティショー（旧東京モーターショー）は2023年10月28日に一般公開が始まる。
地味ながら見逃せない見どころは、商用車の展示だろう。ホンダがリチウムイオン電池を交換できる軽商用電気自動車（EV）を出品。ホンダはさらに、いすゞと共同開発する燃料電池の大型トラックも出品する。
いずれも、次世代を占う環境対応の商用車として注目に値する。
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ジャパンモビリティショー、注目株は？（画像は、ジャパンモビリティショーのウェブサイトより）
脱着交換式の電池なら...満充電の電池と交換し、稼働時間を長くできる可能性
ホンダが展示する軽商用EVは、ガソリンエンジンの軽商用車「N-VAN（エヌバン）」をベースに開発した「MEV-VAN Concept（エムイーブイバン コンセプト）」だ。
ホンダは「N-VAN」をベースにした軽商用EV「N-VANe:」を2024年春に発売する予定だが、このN-VANe:は床下にリチウムイオン電池を固定した従来型のEVだ。
これに対して、MEV-VAN Conceptは電池の脱着が可能で、電池が消耗したら満充電の新しい電池と交換することができる。充電時間の長さを考えると、満充電の電池と交換する方が商用車の場合、稼働時間を長くできる可能性がある。
もちろん固定式の電池の方が容量が多く、交換式の電池よりも満充電当たりの航続距離を稼ぐことができる。今のところ、世界のEVの主流は固定式ではある。だが、果たして、固定式と脱着交換式の電池ではどちらが使いやすいのか――。ホンダはヤマト運輸と両タイプの軽商用EVを使い、実証実験を進めているのだ。
脱着交換式の電池は、ホンダが「Mobile Power Pack e:（モバイルパワーパック イー）」として、すでに電動スクーターで実用化している。この交換式電池パックは1本当たりの容量が1314Whと少ないが、MEV-VAN Conceptはこれを8本搭載するという。
ホンダは固定式電池のN-VANe:の電池容量を明らかにしていないが、満充電時の航続距離は「210キロ以上を目標に開発している」という。
電池交換式のMEV-VAN Conceptがこれを下回るのは確実だが、ホンダは「日中に太陽光で充電した交換式バッテリーを使用することで、充電による待機時間の削減や電力使用ピークの緩和に貢献できる」とアピールしている。
EV化が困難な大型トラック、本命は燃料電池車 トヨタ・日野陣営＆ホンダ・いすゞ陣営、そろって出展でインパクト大
他方、ホンダはいすゞと共同開発する燃料電池の大型トラック「GIGA FUEL CELL」を初めて公開する。
乗用車で燃料電池車を市販した実績のあるホンダは2020年1月から、いすゞと燃料電池の大型トラックを共同開発する契約を結び、2027年の市販を目指している。
高効率輸送（長距離走行・高積載量・短時間での燃料供給）が求められる大型トラックは、EV化が困難で燃料電池車が本命とみられている。
ホンダといすゞが共同開発した燃料電池の大型トラックは、水素を満充填した場合の航続距離が800キロ以上という。これだけの航続距離があれば、ディーゼルエンジン車から不安なく燃料電池車に代替できるはずだ。残る課題は水素スタンドのインフラ整備と、車両コストの低減だろう。
ホンダといすゞはモビリティショーの出展と時期を同じくして、この大型トラックを使った公道での実証実験に着手するという。
ちなみに、燃料電池の大型トラックはトヨタ自動車と日野自動車も共同開発を進めており、今回のモビリティショーに「日野プロフィア Z FCV プロトタイプ」として出展する。こちらの航続距離は約600キロで、すでに公道で実証実験を行っている。目標とする市販時期などは明らかにしていない。
トヨタ・日野陣営とホンダ・いすゞ陣営がそろって、モビリティショーに燃料電池の大型トラックを展示する意義は大きい。次世代の大型トラックは燃料電池車となるのは確実だろう。
前者は日野ブース、後者はいすゞブースでの展示となる。地味ながら、いずれもモビリティショーの見どころになるのは間違いない。（ジャーナリスト 岩城諒）