イスラエル電撃訪問は「危険な誤算」?! それでも英BBCが「バイデン大統領しかいない」と評価する理由とは(井津川倫子)

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   イスラム組織ハマスがイスラエルに大規模な攻撃を仕掛け、両者の軍事衝突に発展するなか、米国のバイデン大統領がイスラエルを電撃訪問して、世界をあっと驚かせました。

   もともと米国は親イスラエルの立場で知られていますが、現職の米国大統領が、砲弾が飛び交い、多くの死者が出ている「wartime」(戦渦)に訪問するのは極めて異例。各国メディアも「gamble」(危険な賭け)と称していますが、果たして、バイデン大統領が「政治生命をかけた」賭けの行方はどうなるのでしょうか?

   早くも「誤算」と報じるメディアがある一方で、中東情勢を知りつくした英BBCは「世界中を見渡しても、バイデン大統領しかいない」と、手腕に期待を寄せていました。その理由は...。

英BBC「80歳のバイデン大統領、世界を見渡しても彼しかいない」

   イスラム組織ハマスによる突然の大規模攻撃で、混乱に陥っている中東情勢。わずか10日間ほどで死者が数千人に及ぶなど、過去に類を見ない甚大な被害が広がっています。

   この先、圧倒的な軍事力を誇るイスラエルの大規模報復が始まったら、一体どうなるのか...。世界中を巻き込んだ紛争への発展が懸念されるなか、各国首脳は「最悪の事態」を避けようと外交手段の限りを尽くしています。

   そんななか、米国のバイデン大統領がイスラエルを電撃訪問。外国首脳のイスラエル入りはドイツ首相に続く2人目でしたが、直前にガザ地区の病院が爆破されて数百人が無くなるなど、戦況が悪化するなかでの「異例の訪問」に、地元米メディアも「危険な橋を渡った」と伝えています。

President Biden walks a tightrope on Israel-Gaza
(バイデン大統領は、イスラエル・ガザ問題で危険な橋を渡っている:NYタイムズ紙)
walk a tightrope on:危ない橋を渡る、綱渡りをする

   残念ながら、多数の民間人死者を出したガザ地区病院爆発の影響で、予定されていた会合が次々とキャンセルになったバイデン大統領。緊張緩和の仲介役としては、期待されていたほどの役割を果たせなかったようです。

   日本でも、「イスラエル訪問は誤算だった」「次期大統領選に向けた地盤固めは失敗に終わった」と伝える報道が目につきます。ところで疑問に残るのは、なぜ、これほどまでのリスクを冒して、バイデン大統領がイスラエル訪問を決行したのかということです。

   複雑を極める中東情勢が、そんなに簡単に解決できるとは当の大統領自身も期待していなかったでしょうし、直前の病院爆発で「最悪のタイミング」となったことはわかっていたはずです。

   そう不思議に思って海外ニュースを追いかけていたら、「今こそ、バイデン大統領の出番だ」という英BBCの記事を見つけました。

   英BBCによると、今年80歳になるバイデン大統領は、議員になった50年前からずっとイスラエル問題に取り組んでいたそうです。さらに、イスラエルのネタニヤフ首相のことも40年近く知っているなど、バイデン大統領に匹敵する「人脈」や「経験」を持つ首脳は、世界中にいないとのこと。

   最近は、演説中に足を踏み外したり、不可解な発言をしたりといったアクシデントが続いて「おじいちゃん大統領」のイメージが強かったバイデン大統領ですが、英BBCは「ようやく、バイデン大統領の『高齢』がマイナスではなく、プラスに働く時がきた」と、中東情勢に関わるキャリアを評価していました。

   「やっと、高齢がプラスになる」というのは、英国らしい皮肉交じりではありますが、確かに、イギリスのスナク首相(43)や、フランスのマクロン大統領(45)が生まれる前からイスラエル問題に取り組んでいるという事実は説得力がありますし、バイデン氏の半世紀にわたるキャリアの右に出るものがいない、という評価には納得です。

   また、政治家として大事な選挙を控えているとしても、戦況が悪化して自身が暗殺される危険性もある遠い外国の地に、「打算」だけで老体にムチを打って出かけるでしょうか?

   もちろん、複雑な国際情勢ですから、バイデン大統領の「人脈」や「長年のキャリア」で状況が一変することはありません。それでも、状況を知り尽くし、特派員を現地に派遣して危険を冒しても現地から報道を続ける英BBCが、バイデン大統領に「淡い期待」を寄せる背景が理解できる気がします。

   バイデン大統領でも状況を変えるのは難しい、それでも、バイデン大統領しかいない...。そんな厳しい現実を知ると、軽々に「今回の訪問は誤算だ」と否定する気にはなれません。日本のメディアだけでは見えてこない、世界の現実がそこにあるようです。

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井津川倫子(いつかわりんこ)
津田塾大学卒。日本企業に勤める現役サラリーウーマン。TOEIC(R)L&Rの最高スコア975点。海外駐在員として赴任したロンドンでは、イギリス式の英語学習法を体験。モットーは、「いくつになっても英語は上達できる」。英国BBC放送などの海外メディアから「使える英語」を拾うのが得意。教科書では学べないリアルな英語のおもしろさを伝えている。
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