東京株式市場で2023年10月11日、カカクコムの株価が一時、前日終値比31円(2.1%)安の1413円50銭まで下落し、約6年ぶりの安値となった。
この日の日経平均株価の終値は前日比189円98銭高の3万1936円51銭。全体として上昇相場となる中だけに、カカクコムの下落は目立った。その後も下落基調にあり、反転のきっかけをつかめないでいる。
23年4~6月期連結決算...最終利益は12.5%減の36億円 食べログ、求人ボックスは好調も、価格.comは苦戦
まず、カカクコムの事業の柱についてみておく。主力は、言わずと知れた「価格.com」だ。パソコンやテレビといった電化製品のほか本、雑貨、家具、ファッション、食品、さらには旅行、保険、ローンまで幅広く比較しながら情報を提供するサービスだ。
このほか、飲食店の情報を提供する「食べログ」、第三の柱として近年、求人情報を提供する「求人ボックス」が育っている。
事業別の売上高にあたる売上収益(2023年3月期)の構成は、価格.comが全体の32.4%、食べログが38.4%、求人ボックスを含む新興メディア・ソリューションが22.8%。ただ、細かく開示されていな利益面では、価格.comのウェートがなお大きいとされている。
こうした実態を踏まえ、少し前(8月3日)の発表になるが、直近の決算となる2023年4~6月期連結決算(国際会計基準)を確認しておこう。
売上収益は前年同期比9.6%増の153億円、営業利益は3.8%減の51億円。最終利益は12.5%減の36億円だった。
全体として売上収益は増えているものの、価格.comに限ると、前年同期比9.5%減だった。カカクコムは「(情報提供する)新製品の減少その他供給面の制約の長期化」を理由に挙げている。一方で、食べログの売上収益は「(新型コロナの5類移行に伴う)社会経済活動の正常化」などを追い風に、前年同期比19.2%増と好調。求人ボックスは42.1%増と急伸した。
証券会社、相次いで目標株価引き下げ 「(価格.comの)新製品登録数が低水準で長期化」など懸念
この第1四半期決算発表後、株式市場のカカクコムを見る目が厳しさを増している。「稼ぎ頭」の価格.comの減収を嫌気しているからだ。
確認できただけでも、野村証券や大和証券、SMBC日興証券のほか、JPモルガン証券、シティグループ証券など、内外の計12社が目標株価を引き下げた。
「価格.com事業の減収が利益を押し下げることを懸念」(SMBC日興)、「(価格.comの)新製品登録数が低水準で長期化。PC含む各商材の最終需要を慎重に見る」(野村)といった見方があった。
食べログ、求人ボックスと優良事業を抱え、価格.com一本足ではない点は強みだが、一時代を築いた価格.comが曲がり角を迎えていることを投資家が懸念しているのは間違いないようだ。(ジャーナリスト 済田経夫)