EV時代、これからの必需品に?...ニチコンの「V2H」新製品登場 太陽光発電の電気ためる&充電インフラの充実に期待

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   コンデンサや回路製品を展開するニチコン(京都市)が2023年10月17日、電動車を家庭用電源として活用できる、V2H(Vehicle to Home)システム「EV パワー・ステーション」の新製品発表会をおこなった。

   EVから電気を取り出し、家庭に給電するV2Hシステムは、ニチコンが2012年に世界で初めて実用化した製品だといい、同社は現在、国内シェア約90%を占める「V2H」のリーディングカンパニーとして存在感を発揮している。

   発表会では、ニチコン 代表取締役会長の武田一平さんと、慶応義塾大学大学院教授の岸博幸さんとのトークセッションもあった。「(製品の)先見性がすごい」という岸さんに、武田会長は「新製品をつくるポイントは『気づき』。社内では1日に1回くらいは『気づき』の人生を送ろうじゃないか、と話している」とアイデアの秘訣を披露した。注目度が高まる「V2H」のポテンシャルとは?

  • ニチコン 代表取締役会長・武田一平さん、慶応義塾大学大学院教授・岸博幸さん(左から)
    ニチコン 代表取締役会長・武田一平さん、慶応義塾大学大学院教授・岸博幸さん(左から)
  • ニチコン 代表取締役会長・武田一平さん、慶応義塾大学大学院教授・岸博幸さん(左から)

太陽光で発電した余剰電力でEVに充電&EVに蓄えた電力の家庭内の活用が期待される「V2H」

   V2Hとは、「クルマ(Vehicle)から家(Home)へ」を意味する、給電システムのことだ。これを使うと、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)など電動車に貯められている電気を、家庭内で利用することができる。また、蓄電システムなどと組み合わせれば、たとえば自宅の太陽光発電で生み出し蓄えておいた電力を使い、EVやPHVへと充電することも可能となってくる。

   このようにV2Hは、電動車に蓄えた電力を家庭内で活用したり、太陽光で発電した余剰電力で電動車に充電できたりする特性から、太陽光発電の「自家消費」に役立つ。電気代やガソリン代といった家庭や事業所におけるエネルギーコストの削減にもつながりそうだ。また、災害時には電動車を非常電源として活用できることもメリットとなる。

   太陽光発電と組み合わせても使えるV2Hは今後、さらに注目度が高まりそうだ。現在、政府は2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出を全体としてゼロとすること)の実現を目指している。そのための取り組みが加速するなかで、日本では2030年に新車販売台数の20~30%をEV/PHVにする目標がある。EV/PHVの増加に呼応して、V2Hの市場拡大が予想されている。

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プレゼンに臨むニチコン 代表取締役会長・武田一平さん

   こうした背景があるなかで、今回発表となった「EV パワー・ステーション」の新製品(VSG3-666CN7)。ポイントは、現行モデルに比べて、小型・軽量化したことだ。それにより、設置の自由度が上がったという。

   たとえば、現行モデルでは一体化されていたパワーユニット(本体部分)と、プラグホルダ(操作部分)の設置がセパレートとなったことで、狭い場所での設置が可能に。パワーユニットとプラグホルダともに壁掛設置ができるようになった。また、新回路方式で高効率になったほか、塩害地域への設置も対応する(オプション)。色はシルバーとブラウンを展開。

   発表会では、新製品の特長に加えて、「脱炭素」を取り巻く動向を話題に、ニチコン 代表取締役会長の武田一平さん、慶応義塾大学大学院教授の岸博幸さんとのトークセッションがあった。

   まずは製品のメリットについて、岸さんは

「日本の課題という観点で考えたら2つある。1つ目は、再生可能エネルギー(の割合)を増やさなくてはいけない。ご承知おきのように、政府の目論見は2030年に発電は全体の36~38%を再生可能エネルギーにすること。そのなかで、いちばん大きい割合は太陽光発電になる。太陽光発電を増やす観点でいえば、パネルを増やすことも大事だが、そこで発電した電気を貯めるという(蓄電池的な)部分も非常に大事だ」

   と話し、課題の解消につながる「V2H」のポテンシャルを評価した。そしてもう1つ、EV普及の観点でもメリットがあるとした。

「残念ながら世界のEV競争の中で、だいぶ日本は遅れてしまっている。当然、政府もEVを普及させることを考えているが、その観点からいえば、充電インフラが重要だ。その意味で、小型の使いやすいこの充電器はいいタイミングで出たと思う」
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トークセッションに臨む武田一平さん、岸博幸さん(左から)。中央に、「EV パワー・ステーション」の新製品

   一方、ニチコン 代表取締役会長の武田さんは、V2H開発のきっかけを岸さんに問われ、

「EVには家庭用の5倍、10倍の電池を積んでいるが、EV自身は走っている時間は少なく、実際には90%は止まっている。その止まっている時にEVの電池から、家庭に戻したりして有効に使う。あるいは、災害時にも使えないかと、EVから電力を取り出すという(発想をした)。(2010年の開発開始時には)EVに電気を入れるものはあったが、電気を取り出す仕組みはなかったので、これがあったら便利だなと開発に踏み切った」

   と説明した。また、岸さんは、先陣を切ってV2H開発に取り組んだ「先見性がすごい」と話すと、これを受けて武田さんは次のように力強く語った。

「新製品をつくるポイントは、単純にいえば、『気づき』だと思う。社内でよく言っているが、1日ぼやっとしているよりは、1日に1回くらいは『気づき』の人生を送ろうじゃないか、と。3回もやったらすごい。サッカーだったら、『ハットトリックだ!』なんて言うんですが(笑)。そういうところから、こうした製品が生まれてきている。
また、会社の経営理念を念頭に置きながら、将来世の中はどう動くのか。社会はどういうことを求めているか――。そういうことを絶えず考えていると、ふっと、いろんなアイデアが浮かんでくる。それが『気づき』だ」

   なお、発表会では「EV パワー・ステーション」の新製品に加え、家庭用蓄電システムの「発展型太陽光パワーコンディショナ(V2H連携型ハイブリッド蓄電システム)」(ESS-E1シリーズ)も紹介された。

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