アイデアとしては有望でも、スケールアップでつまずくのはなぜ?

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アイデア実現のための5つのチェックリスト

   そして、アイデア実現のための5つのチェックリストを挙げている。

   第1は、偽陽性や詐欺ではないか、ということだ。

   エビデンスまたはデータのごく一部を、何かが正しいことの証拠だと誤って解釈するときに偽陽性が発生するという。

   例として、2006年クライスラーが導入しようとした健康増進プログラムを紹介している。同社は欠勤問題を抱えていた。病気で欠勤する従業員の代わりに組み立てラインに立つ「ブルペン」要員を確保するため、年間数百万ドルを投じていた。

   当時、31の工場があり、まずは1つの工場で金銭的なインセンティブを使って健康増進活動に参加してもらった。参加者は、参加しなかった者にくらべて、医療費は少なく、欠勤も少なかった。

   CEOは結果に感激し、プログラムを残りの30工場にも広げる予算を手当てしようとした。そこに、著者らが介入した。偽陽性を疑ったのだ。

   もう1つ、パイロット調査を行ったところ、参加した従業員は、参加しなかった従業員より良い結果を出したわけではなかった。初回の結果は、統計上のまぐれ――つまり、偽陽性だったのだ。ここから、「サンプルはあくまで1つのサンプルに過ぎない」という教訓を導いている。

   第2は、対象者を過大評価していないか、ということだ。

   例としては、ウーバーからリフトに移ったときの体験を披露している。リフトは「会員制」を導入しようとしたが、著者は反対した。理由をこう説明している。

「リフトの会員になるであろう人の大多数は、既に頻繁に利用しているはずだ。有料会員になることで最も得する人たちだが、これ以上、乗車回数は増やさない『おまけ不要』タイプだろう。この見方が正しければ、こうした顧客を有料会員にすると、利益が帳消しになるどころか、コストが増えていくことになる」

   実験的に導入されたが、「おまけ不要」タイプが、「おまけ好き」の3倍近くにのぼっていた。つまり、会員になったコアの利用者の大多数は、利用回数を増やしていなかった。利用回数は変わらず、割引料金の適用を受けていた。

   結果を踏まえ、週に2、3回利用する顧客向けの制度を始めた。だが、すぐにコロナ禍の影響を受け、ライドシェアもほぼ止まった。ここから、現在の対象者(顧客)がどんなタイプなのかを理解していないと、スケールアップした場合に、どんな人たちが反応してくれるか正確に予測することはできない、と指摘している。

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