マネックスGに「じり貧」の危機感か? 「手数料無料化」とは一線、有料を維持
一方のマネックスGにとっては、このままではじり貧に陥りかけない危機感のなかでの決断だったとみられる。
創業者の松本氏は米大手金融グループのゴールドマン・サックスGS)のトレーダーとして名をはせ、最年少でパートナー(共同経営者)になったが、日本でネット証券が黎明期を迎え、「遅れればチャンスはない」とGSでの地位を投げうち、1999年にマネックス証券を起業した。
ただ、ネット証券は近年、顧客の奪い合いになり、手数料引き下げ競争が激化して、各社の体力を奪っていった。その中で、SBI証券(1000万口座)と楽天証券(900万口座)の2強体制が鮮明になるなか、マネックスは200万口座にとどまっている。
そして、最後の一撃ともいえるのが、日本株の売買手数料無料化だ。SBIが9月30日からの実施を打ち出し、楽天が10月1日からと、追随した。
マネックスはこれまでも、投資信託の銘柄選定のサポートなど手数料以外の顧客サービスに力を入れて対抗してきたが、個人投資家には十分響かなかった。
SBIなどの無料化とも一線を画し、今回の提携でも無料化しない方針を維持するとしている。
このため、「このままでは顧客基盤を崩されると懸念したのだろう」(業界筋)といわれている。
ドコモとの提携で、これまでの「2026年度に300万口座」の目標を「500万口座」に引き上げた。マネックスGの利益としては、証券の半分をドコモに売ったのに伴い半減した分が、規模が倍になれば元に戻るという計算か。
ドコモへの株式売却価益は182億円。成長領域と位置づけるアセットマネジメント(資産運用)ビジネスを中心に投資を進める方針と伝えられるが、具体像は不明だ。
証券界で一世を風靡した松本氏の次の一手が注目される。(ジャーナリスト 白井俊郎)