社会保険でもらえるお金、こんなにも多かった?!

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   企業で働く人であれば、毎月の給与明細で自分の社会保険料が分かる。健康保険、厚生年金保険、雇用保険、介護保険だ。実際、どんな場合にお金がもらえるのだろうか?

   本書「読めば得する 働く人のもらえるお金と手続き 実例150」(朝日新聞出版)は、実例を通して、社会保険の仕組みと手続きを教えてくれる本だ。

「読めば得する 働く人のもらえるお金と手続き 実例150」(蓑田真吾著)朝日新聞出版

   著者の蓑田真吾さんは社会保険労務士。東京都内の医療機関に勤務した約13年間、人事労務部門で労働問題や社会保険に関する相談に対応してきた。独立後は年金・医療保険に関する相談を扱っている。

転職活動中の健康保険はどうする?

   本書は「転職時」「副業」「産休・育休」「介護」「病気やケガ、年金」の5章から構成されている。各章のはじめで、基本的なポイントや手続きをまとめている。その後、質問と回答という流れになっている。どれも実際によくありそうな内容だ。

   たとえば、「個人事業主には退職金がありません。何か補填されるような制度はありますか?」という問いに対し、「小規模企業共済制度」の利用を勧めている。

   従業員が20人以下の個人事業主や小規模な企業の役員のための積み立て式の退職金制度だ。掛金は全額を所得控除できるので、高い節税効果がある。

   毎月の掛金は1000円~70000円で、途中で増減もできる。申し込みは最寄りの商工会議所ででき、全国で約159万人が加入しているという。

   転職時の項目で気になったのは、こんな内容だ。

「遠方の会社から面接の機会をいただきました。交通費などがもらえる制度はありますか?」
「転職活動中の健康保険はどうするのがよいですか?」
「退職後の健康保険で、保険料が安いのは国保と任意継続のどちらですか?」
「前の会社で企業年金をやっていましたが、転職先にはありません。何か手続きをしないと損失が発生しますか?」

   それぞれ、有効な利用できる制度をアドバイスしている。転職する人が多い時代だ。さまざまな制度を利用することで、もらえるお金がこれほどあるのか、また、制度を知ることの大切さを痛感するだろう。

教育訓練給付金で転職、副業の準備を

   「副業を始めるため手に職をつけようと専門学校に通いたいのですが、資金がありません。国から補助を受けられる制度はありませんか?」という質問に対して、「現在の職場で雇用保険に加入していれば、入学金や授業料を補填してもらえる『教育訓練給付金』が利用できます」と回答している。

   教育訓練給付金の対象講座は、約1万4000もあるという。厚生労働大臣から指定を受けている施設や講座に受講の申し込みをし、修了後ハローワークに給付金の申請をする。

   教育訓練の種類によって給付率に大きな差があることに驚いた。介護福祉士などの業務独占資格の取得を目標とする講座やデジタル関係の講座の場合は、「専門実践教育訓練」として、最大で受講費用の70%(年間上限56万円、最長4年)が支給される。

   だが、英語検定や簿記検定などの資格を目標とする講座の場合、「一般教育訓練」として、受講費用の20%(上限10万円)がもらえるに過ぎない。どんな講座があるのか、「教育訓練」で検索することを勧めている。オンライン講座や土日の講座もあるそうだ。

親の介護で退職する前に、「介護休業」の利用を

   介護の基本で初めて知ったことがある。「介護休暇」や「介護休業」は、正社員だけでなく、契約社員や条件を満たすパートタイマー、派遣労働者にも適用されるということだ。

   介護の対象が要介護2以上または一定の条件を満たすと「介護休業」が認められる。介護休業を取得すると、賃金日額の67%分の介護休業給付金が93日間もらえる。

   親などの介護のため会社を辞める「介護退職」をする前に、「介護休業」を選択した方がいいと多くの経験者が語っている。どんな制度があるのかを知っておくことで、自分の生活が守られるのだ。

   「転職先の会社で再度、親の介護が必要になりました。介護休業は2回取れますか?」という質問に対し、「正社員であれば、転職後も通算3回まで介護休業を取れます」と回答している。

   「病気やケガ、年金の手続き」の章で、最も驚いたのは入院するのにもタイミングがあるということだ。

   「2週間ほど入院することになりそうです。高額療養費の視点からいつごろ入院するのがお得ですか?」という質問に対し、「2週間ほどの入院なら、1~7日くらいまでに入院するとよいでしょう」と回答している。

   どういうことか? 高額療養費はその月の1日から末日で高額療養費の限度額に達するか否かを算定するからだ。月をまたいでしまうと、前月の分は前月のみで算定されてしまう。

   通読して感じたのは、いかに働く人の生活が「社会保険」によって手厚く保護されているか、ということだ。裏を返して言えば、社会保険に加入していない労働者の権利が脆弱であるということだ。

   国は社会保険に加入できる人を増やそうと近年さまざまな施策を進めてきた。社会保険を知ることは、自分を守る手段であることを多くの人に知っていただきたい。(渡辺淳悦)

「読めば得する 働く人のもらえるお金と手続き 実例150」
蓑田真吾著
朝日新聞出版
1430円(税込)

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