ジャパンモビリティショーは2023年10月28日に一般公開が始まる。旧東京モーターショーから装いを変えての初の開催では、軽の電気自動車(EV)が注目されそうだ。
注目の1台はスズキが参考出品する軽ワゴンEV「eWX」だ。
「ハスラー」をベースにしたと思われるボディーにリチウムイオン電池を搭載。電池容量などは未公表だが、航続距離は230キロという。
先行する日産・三菱に対抗...スズキ、航続距離500キロの「EV世界戦略車」も参考出品
現在、日本の大手メーカーが発売する軽の乗用EVは日産自動車と三菱自動車工業が共同開発した姉妹車「日産サクラ」と「三菱eKクロス」だけだ。
両車の電池容量は20kWh(キロワット時)、航続距離は180キロ(WLTCモード)となっている。
スズキは、先行するサクラとeKクロスを意識し、両車を50キロ上回る航続距離を実現した。電池容量は恐らく25kWh程度だろう。
車両価格の上昇につながるリチウムイオン電池の搭載量を抑え、日常生活で必要最小限の航続距離を確保するというコンセプトはサクラなどと同じだ。
スズキのeWXは参考出品にすぎないが、スズキが軽の乗用EVの市販を狙っているのは間違いない。
スズキは「EV世界戦略車」の第一弾という小型EV「eVX」も参考出品。こちらの航続距離は500キロで、スズキがライバルに負けじとEV化を急いでいることがわかる。
スズキのライバルのダイハツ工業も軽の乗用EV「me:MO(ミーモ)」と「OSANPO(オサンポ)」を参考出品する。
ただし、こちらは航続距離など具体的なデータが明らかでなく、試作車の領域を出ていない。市販するとすれば、スズキeWXが先だろう。
軽商用EVも注目ポイント...トヨタ・スズキ・ダイハツ3社連合が共同開発、「eエブリィコンセプト」出品...23年度内に市販予定
軽の乗用EVと並び、軽の商用EVも今回のモビリティショーの注目ポイントだ。
トヨタ自動車、スズキ、ダイハツの3社が共同開発した軽の商用EVだ。スズキは「eエブリィコンセプト」の名称で参考出品する。
3社連合の軽商用EVはダイハツの「ハイゼットカーゴ」をベースに、トヨタが電動化技術を供与する。ダイハツが生産し、トヨタは「ピクシスバン」、スズキは「エブリィ」のEVとして2023年度内に市販する予定だ。
航続距離はこれまで「200キロ程度」とされてきたが、公式に200キロと発表された。
スズキは「軽バンの使い勝手の良さはそのままに、EVならではの静かで力強い走りを実現するだけではなく、非常時にはクルマの電気を外部に供給するなど、地域社会へ貢献できるモデル」と説明している。
軽商用EVは国内の大手メーカーでは唯一、三菱自動車工業が「ミニキャブ・ミーブ」を市販している。
ホンダは軽商用EV「N-VANe:」出品、24年春に発売予定...ヤマト運輸やインドネシア国営企業と実証実験
これに対抗するのは3社連合だけでない。ホンダは軽商用車「N-VAN(エヌバン)」をベースにした新型の軽商用EV「N-VANe:」を2024年春に発売する予定だ。
ホンダは9月28日にN-VANe:をホームページで先行公開。今回のモビリティショーに出品する。
ホンダは2023年6月からヤマト運輸とN-VAN e:のプロトタイプを使用した実証実験を行い、海外では9月からインドネシアの国営石油会社とも実証実験を始めた。商品配送時の実用航続距離や充電時間などの実用性を検証するという。
航続距離は3社連合を意識してか、「210キロ以上を目標に開発している」という。電池容量などは未発表だ。
大手では国内唯一の軽商用EVミニキャブ・ミーブは三菱自が2011年12月に発売したが、需要が限られ、2021年3月末に一旦生産を終了。その後、2022年11月に市販を再開した。
電池容量は16kWhで、航続距離は133キロ。メーカー希望小売価格は243万1000円からだ。
3社連合、ホンダとも航続距離は200キロ以上となり、価格は200万円台とみられる。
ジャパンモビリティショーは乗用、商用とも軽EVの見どころが多い。(ジャーナリスト 岩城諒)