就職先や転職先、投資先を選ぶとき、会社の業績だけでなく従業員数や給与の増減も気になりませんか?
上場企業の財務諸表から社員の給与情報などをさぐる「のぞき見! となりの会社」。今回取り上げるのは、2023年10月27日に東証グロース市場に上場予定のドリーム・アーツです。
ドリーム・アーツは、1996年設立。現在は東京・恵比寿、広島、那覇、石垣に拠点を、中国・大連にグループ会社を置き、大企業向けのクラウドサービス事業とシステム開発・コンサルティング事業を展開しています。
今期の業績は過去最高を更新見込み
それではまず、ドリーム・アーツの近年の業績の推移を見てみましょう。
なお、2020年12月期以前は単体決算、2021年12月期以降は連結決算です。
ドリーム・アーツの売上高は2018年12月期以降、横ばいで伸び悩んでいました。2020年12月期には最終赤字に転落。2021年12月期も営業赤字でしたが、法人税等調整額がマイナス4552万円計上され、かろうじて最終黒字となっています。
2022年12月期には売上高が前期比24.9%増の36.7億円に伸び、営業黒字および最終黒字を確保しましたが、営業利益率は5.1%と低調でした。
今期(2023年12月期)は業績に勢いが出始め、第2四半期決算時点で売上高22億円、営業利益3.7億円。営業利益率も16.8%に改善し、当期純利益を含めて過去最高を更新する見込みです。
大企業向けワークフローで国内シェアNo.1
ドリーム・アーツは大企業に向けたSaaSを中心に、主に4つのプロダクト・サービスを提供しています。
(1)「SmartDB(スマートディービー)」は、直感的な操作と簡易な設定により、非IT人材による業務アプリ開発を可能とするノーコード開発ツールです。ワークフローシステムの市場シェアは大企業市場で53.0%、市場全体でも27.7%を占め、いずれもシェアNo.1(出典:テクノ・システム・リサーチ)に輝いています。
(2)「InsuiteX(インスイートエックス)」は、大企業向け社内ポータル構築ツール。通知通達機能や集計機能、業務ダッシュボード機能などを備え、従業員が社内情報にアクセスしやすくなる環境整備を支援します。
(3)「Shop(ショップ)らん」は、グローバルSPAチェーンから地域密着スーパーマーケットチェーンまで幅広く利用されている、チェーンストアの店舗運営を支援する情報共有ツール。店舗管理システム市場のシェアは61.1%(出典:富士経済)と圧倒的です。
(4)「DCR(DX Custom Resolution)」は、企業固有の戦略要件に基づいてシステムを開発し、クラウド基盤上で運用しつつ、継続的な機能拡張開発を行う、特定顧客向け開発・運用一体型のサービスとのことです。
セグメント別の売上高構成比は、「クラウド事業」が63.2%、「オンプレミス事業」が16.3%、「プロフェッショナルサービス事業」が20.5%です。
クラウド事業の収益源は「SmartDB」「InsuiteX」「Shopらん」「DCR」の月額利用料によるストック収益。オンプレミス事業の収益源は「SmartDB」「InsuiteX」のパッケージソフトウェアの「メンテナンス料」によるストック収益と、同「ライセンス料」によるスポット収益の2本立てです。
プロフェッショナルサービス事業の内容は、「クラウド事業」および「オンプレミス事業」にかかるシステム開発・改修、導入支援、各種作業などの労働集約型業務で、すべてスポット収益となっています。
「現場部門向けのシステム領域」での成長目指す
ドリーム・アーツの従業員数は、2019年12月期末の150人以降、164人、241人(以下連結)、2022年12月期末の248人と順調に伸びています。
2023年8月末現在の従業員数は、226人とやや減少。平均年間給与は634.9万円。平均年齢は35.9歳、平均勤続年数は8.2年です。
ドリーム・アーツの採用サイトを見ると、「『大企業』の『大変革』を『大成功』へ導きたい」というスローガンが掲げられており、新卒採用のエンジニア職、ビジネス職、デザイン職のほか、エンジニア職を中心とした中途採用の募集が行われています。
自社プロダクト・サービスのプロダクト開発エンジニア(マネージャー候補)職では、想定年収は690万円から990万円(45時間相当の固定残業代を含む)。コアタイムなしのフレックスタイム制で、年間休日は120日です。
ドリーム・アーツは「BD(ビッグドーナツ)市場のリーディングカンパニーを目指す」というビジョンを掲げています。ビッグドーナツとは、国内の従業員 1000名以上の大企業約4000社において、ERPなどのミッションクリティカルな基幹系システムを取り囲んで配置されている「現場部門向けのシステム領域」を指す造語です。
ビジネスモデルの特徴は、クラウド事業およびオンプレミス事業の一部が安定的に生み出す「ストック売上」の割合が高いことです。売上高全体に占める割合は、2018年12月期の66.5%(18億5053万円)から2022年12月期の78.9%(28億9478万円)へと順調に伸長し、特にクラウド事業の売上比率は、2018年12月期の35.4%から2022年12月期の63.2%へと急拡大しています。
主力のノーコード開発ツールの市場規模は、今後も年率24.4%の成長が見込まれています(出典:ITR)。BtoBビジネスのためプロダクト・サービスの知名度は高くありませんが、企業のDXの流れが加速する中で、デジタル人材の育成とともに業務システム開発の内製化に取り組む会社は少なくなく、市場の成長の波にどう乗っていくのか注目されます。(こたつ経営研究会)