ふるさと納税事業などを展開するトラストバンク(東京都渋谷区)は2023年9月14日、東京圏の若者(15歳~29歳)919人を対象とした『若者の地方に対する意識調査』の結果を発表した。
それによると、「地方で暮らすことにあこがれる」人は49.3%(「とてもあこがれる」16.2%、「まあまああこがれる」33.1%)という結果に。そのうち、「実際に地方暮らしをしてみたい」と答えた人は「79.0%」にのぼるなど、関心の高さがうかがえる結果となった。また、「良い仕事の条件」を聞いたところ、最多は「収入が高い」が53.3%となった。
トラストバンクは「地方での仕事の『収入』に関するイメージが影響し、地方暮らしの意向がありながらも踏み出せないケースが多い」とみる。
理想の地方暮らしが実現できそうな都道府県...1位「北海道」、2位「沖縄県」、3位「長野県」
今回の調査は、都心部の若者が実際に地域に移り住んだり、地域貢献しようとしたりする動きを具体化させるためには何が必要で、何が障壁となるのか、その意識を探る内容だ。
はじめに、「地方で暮らすことにあこがれますか?」と質問した。すると、最多は「まあまああこがれる」で「33.1%」、次いで「とてもあこがれる」が「16.2%」となり、地方移住に関心を寄せる人は「49.3%」だった。
一方で、「あまりあこがれない」が「14.8%」、「まったくあこがれない」が「14.4%」で、あわせて「29.2%」は関心が薄いようだ。
続いて、上記の質問で「とてもあこがれる」と「まあまああこがれる」と答えた人(n=453)に対して、「実際に地方暮らしをしてみたいですか」と聞くと、「はい」は「79.0%」で多くを占めている。
つぎに、「地方暮らしをしてみたい」と回答した人(n=358)に「地方暮らしのスタイル」を聞くと、「完全移住」が「47.5%」、「短期の移住」が「22.1%」、「都心に自宅を持つ二拠点居住」が「21.2%」、「その他」が「0.6%」という結果になった。
そして、「地方暮らしをしてみたい」(n=358)とした回答者には、どんな地域が最も暮らしやすそうか、選んでもらった。すると結果は、「自分と同年代の移住者がいる地域」が「59.2%」と過半数を超えた。
次いで、「移住者がほとんどおらず地元住民が多い地域」は「17.0%」で、「自分より年上の移住者がいる地域」が「9.2%」、「人があんまり住んでいない地域」が「6.7%」となった。
さらに、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県を除く「理想の地方暮らしが実現できそう」な都道府県トップ5のランキングでは、1位が「北海道」(9.9%)、2位が「沖縄県」(7.5%)、3位が「長野県」(6.6%)、4位が「静岡県」(4.9%)、5位が「福岡県」(4.2%)となった。
あなたにとって「良い仕事」の条件は? 「収入が高い」53.3%、「楽しさ・やりがいを感じる」47.9%、「働きやすい」46.2%
一方で、働くことへの意識についても聞いた。人生において「仕事でのキャリアアップ」と「プライベートの充実」のどちらを大切か聞くと、全体では「仕事でのキャリアアップ」が「12.5%」、「プライベートの充実」は「54.5%」だった。とくに、年代別では20歳~24歳は「プライベートの充実」と「62.1%」が答えている。
さらに、「あなたにとって『良い仕事』の条件は何ですか」と聞くと、最多は「収入が高い」で「53.3%」。次いで、「楽しさ・やりがいを感じる」が「47.9%」、「働きやすい」が「46.2%」、「会社に将来性・安定性がある」が「25.1%」などが上位にあがった。なお、「社会貢献性が高い」は「16.4%」で6位につけている。
また、「『良い仕事』をするために都市圏に住んだ方がよいと思うか」を聞くと、全体の「57.5%」が都市圏に住んだ方がよいと思う(「非常に思う」と「ややそう思う」の合計)と回答した。
これに関連して、地方で暮らすことにあこがれている(「とてもあこがれる」「まあまああこがれる」)若者に対象を絞ると、「63.6%」(「非常に思う」「ややそう思う」の合計)が「良い仕事」をするには都市圏に住んだほうが良いと考えているようだ。
トラストバンクは「地方でも『良い仕事』はできると考えるのはわずか11.1%で、彼らは相対的に『収入』を重視していない傾向にあることも分かった」としている。
このほか今回の調査では、「社会貢献」や「地域課題」への理解と関心についても質問している。「あなた自身は持続可能な地域づくりに貢献したいと思いますか?」と聞くと、全体では「非常に思う」が「17.4%」、「ややそう思う」が「38.3%」、「どちらとも言えない」が「22.0%」になった。
年代別では、15歳~19歳が「非常に思う」が「23.5%」、「ややそう思う」が「42.4%」であわせて「65.9%」となっていて、数値を伸ばしているのが特徴だ。
また、自分の住んでいる地域の地域課題についての意識について聞くと、地方で暮らすことにあこがれる(「とてもあこがれる」、「あこがれる」)と回答した人のうち、「41.1%」が自分の住む地域課題を知っていると回答した。
一方で、地方暮らしにあこがれない(「あまりあこがれない」「全くあこがれない」)と回答した人で地域課題を知っている人は「11.6%」と、地方暮らしへのあこがれがあるほど、自分の住む地域の課題にも関心が高いことがわかった。
今回の調査結果に対して、J-CAST 会社ウォッチ編集部が調査元に聞くと、まずランキングについては、
「東京圏に住む若い世代は、地方暮らしについて、自然豊かな環境の中で自分らしい時間を過ごしながら、比較的物価・家賃が安く抑えられるといったイメージを持っているようです。
一方、理想の地方暮らしが実現できそうな都道府県トップ5では、東京から新幹線や飛行機でアクセスしやすく、大都市がある都道府県が上位に入りました。
東京圏から時間的に近く、都心の暮らしもおう歌できる場所が人気を集めたのでしょう。ただ、いずれも『未経験の移住』に対する不安が背景にあり、不安を払拭することで理想の地も変わる可能性があります」
という。また、こうした傾向は、Z世代の特性にも関係するようだ。調査元はこう説明する。
「この世代は共通して『コスパ』『タイパ』を重視していると考えます。必ずしも高収入でなくとも、労働への対価として、プライベートを充実させるためなど自分自身が納得できる十分な収入が得られる仕事を求めているようです」
「若い世代は地域貢献への意識も高いという結果が出ています。地方移住者を増やし、活力に変えるには、地方自治体が彼らの不安に寄り添い、的確な『情報』を提供することがカギを握ります。
仕事や収入に関しても、情報の少なさは、地域には『良い仕事』が少ないというイメージにつながってしまいます。実際は先進的な働き方改革をしている中小企業もありますし、デジタル化で新たな価値を生みだしている第一次産業の生産者もいます。地域の魅力をしっかり伝えるために知恵を絞ることで移住の壁は一定程度払しょくできるはずだと考えています」
なお、この調査は2023年7月26日から27日にかけて、東京圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)に住む15歳から29歳の男女919人を対象に、インターネットで行った。