人生の選択は、大小を問わず「感情」が土台にあります。今回紹介したい本書のゴールは、自分の「感情」のエネルギーを活用して、日々の選択の質を変え、「流されない」人になっていただくことです。
今回は、マインドフルネスを解説した1冊を紹介します。
『人生の優先順位を明確にする 1分マインドフルネス』(望月俊孝著)KADOKAWA
人生の質を下げるネガティブ思考
「マインドフルネス」は、マサチューセッツ大学医学大学院教授のジョン・カバット・ジン(Jon Kabat-Zinn)によって確立された理論です。ストレスに対応する手段として、マインドフルネスは広く浸透してきました。ビジネス、瞑想、スピリチュアル、など活用領域が広いのも特徴です。
「マインドフルネス」という言葉の反対は、「マインドレスネス」です。これは、注意が散漫な状態、無意識の状態のことであり、「自動操縦モード」とも言われます。
自動操縦モードになると、情報の制御が難しいので、ネガティブな感情に陥ってしまう危険性があるのです。忙しいときやプレッシャーに負けそうなとき、ストレスを感じているときには、心は簡単にネガティブ思考に陥ってしまいます。
そんなとき、「マインドフルネス」な状態になれたら、つまり自動操縦モードの心を解き放つことができたら、ネガティブな感情も癒されるでしょう。
「マインドフルネスにいるときは、私たちの心はさまよいにくいのです。では、どうすればよいのでしょうか。決め手は『ひとさじの工夫』です。2009年 ハーバード大学心理学部教授エレン・ランガーらは次のようなユニークな研究を発表しました。ランガーは、交響楽団に次の2種類の心構えで演奏をしてもらいました」(望月さん)
「1つが、『過去に一番良かったパフォーマンスを忠実に再現する』、2つめが『自分だけが分かる程度の新しいニュアンスを演奏に即興で入れてみる』です。結果、楽団員の多くが没頭し、かつ聴衆が高く評価したのは、新しいニュアンスに挑戦した2つめのマインドフルネス条件の演奏でした」(同)
自分がいつもしていることに、ほんの「ひとさじの工夫」を加えてみること。それが「没頭感」と見違えるパフォーマンスをもたらしたことになります。
適切な作業が脳を活性化させる
つぎに、脳をコンピューターにたとえてみましょう。記憶された膨大な過去のデータはハードディスクに蓄えられています。そして、現実に起こるすべてのことに対応していく力がメモリであり、メモリ上で動いているのがソフトやアプリと表現できます。
メモリは、パソコンで行う作業を一時的に記憶する部品のことです。作業をする際、机が大きいほど、たくさんのモノが載せられて使いやすいですよね。作業時に必要な容量といえ、どんなに優れたPCでも、メモリの容量以上の処理をさせると、動きが悪くなります。処理能力を適切なものにしないと、パフォーマンスが発揮できなくなります。
マインドフルネスは、Googleをはじめ、多くのグローバル企業で導入されて日本でも関心が高まっています。マインドフルネスを、うまく実行できれば、私生活は充実し仕事のパフォーマンスも向上すると考えられています。
10年前であれば、マインドフルネスを習得するには、座禅道場や瞑想教室に入門するしかありませんでした。しかし、今では自宅で簡単に取り組むことが可能です。マインドフルネスライフを後押しするために、本書は誕生しました。忙しくても継続することができます。マインドフルネスに関心のある方は、手にとってもらいたい一冊です。(尾藤克之)