英語になった「ikigai」が話題に...世界中で「人生が変わった」人続出! なぜ海外で「生きがい」はブームなのか?(井津川倫子)

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「日々の小さな幸せが生きがい」 日本人が長生きなのは「ikigai」のおかげって本当?!

   それでは、なぜこれほどまでに「ikigai」が世界の人々を魅了するのでしょうか? 1番の理由は「圧倒的な事実」だと思います。

   「ikigai」のベースになっているのは、沖縄県に住む人々の生き方です。沖縄は、人口に占める100歳以上の人の割合が世界最高水準で、世界有数の長寿エリアとして知られています。また、2023年にWHO(世界保健機関)が発表した世界保健統計では、世界で平均寿命が最も長い国は日本で84.3歳でした。

   こうした、日本の長寿を裏付けるデータが、「圧倒的な事実」として「ikigai」コンセプトを支えています。「ikigai」が長寿の要因かどうかはわかりませんが、データの信ぴょう性とコンセプトをうまく結びつけたことが「信用」につながり、世界で支持されているのだと分析します。

   2つ目の理由は、「ikigai」の手軽さです。実は、英語には「ikigai」に匹敵する言葉は存在しないそうです。「人生の目的」といった言葉よりも漠然としていて、臨機応変に使えることが「ikigai」の特徴です。

   たとえば、「ikigai」の定義はあるものの、「ikigaiは必ずしも大金を稼ぐことではない」とか、「ikigaiは大きな目標でなくていい」、「ikigaiはコロコロ変わってもいい」といったカジュアルさが魅力なのだそう。

   たしかに、「仕事が生きがい」という人もいれば、「ペットが生きがいだ」とか、「ガーデニングが生きがいだ」という人もいるでしょう。逆に、「仕事が人生の目的」とか、「ペットが人生の目的」というのは仰々しくて、口にするにも気合が必要です。

   それぞれの人が、身の丈に合った「ikigai」を見つけて気軽に口に出せることが、たくさんの人に受け入れられる要因だと、専門家も指摘していました。

   3つ目の理由は、海外の人々が日本に抱く「ミステリアス」なイメージでしょう。

   日本食やアニメ、着物や富士山といった、いわゆるクールジャパンは知られていても、背景にある日本人の生き方や人生観はあまり知られていません。地理的にも遠い「極東」の国・日本が醸し出す「ミステリアス」なイメージが「ikigai」と重なって、人々を引きつけていると思われます。

   実際、「ikigai」を紹介する時に、「The Secret of ikigai」(生きがいの秘密)など「Secret」(秘密)を使うケースが目立ちます。「これまで秘密のベールに包まれていた、日本式長寿の秘訣を明らかにする」といったコンセプトが世界で注目を集めることに、異論を唱える人はいないでしょう。

   意外なことに、「ikigai」は瞬間的なブームに終わらず、今も世界中に広がり続けています。コロナ禍でそれまでの生き方を見直す人が増えるなか、日々の小さなことにも幸せを見つける「ikigai」は、生きづらい世の中を前向きに生き抜くための「支え」として、人々の心にじわじわと浸透していくのかもしれません。「ikigai」の行方に注目です。

   それでは、「今週のニュースな英語」は、「life-changing」(人生が変わるような)を使った表現を紹介します。

Ikigai could be a ticket to life-changing experiences
(生きがいは、人生が一変するような体験につながる)

This is life-changing reform
(まさに、人生が変わるような改革だ)

It's a life-changing movie
(人生を変えるような映画だ)

   今回、海外から逆輸入するようなかたちで、「生きがい」の価値を再認識しました。

   社会的に成功して大金を得る「アメリカンドリーム」のような高い目標を、みんながいっせいに目指す時代は終わったのかもしれません。「みんな違ってそれでいい」。「ikigai」にはそんな心の広さを感じます。

   私たちも、「これが私の生きがいだ」ともっと気軽に口に出してみたら、長生きできるかもしれませんね。(井津川倫子)

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井津川倫子(いつかわりんこ)
津田塾大学卒。日本企業に勤める現役サラリーウーマン。TOEIC(R)L&Rの最高スコア975点。海外駐在員として赴任したロンドンでは、イギリス式の英語学習法を体験。モットーは、「いくつになっても英語は上達できる」。英国BBC放送などの海外メディアから「使える英語」を拾うのが得意。教科書では学べないリアルな英語のおもしろさを伝えている。
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