転職サービスなどを展開するマイナビ(東京都千代田区)は2023年9月27日に、2023年1月~7月に中途採用を行った企業の人事担当者を対象とした「中途採用実態調査(2023年)」の結果を発表した。
調査によると、中途採用を実施する理由には、「即戦力の補充」が48.1%、「既存事業の拡大」が31.6%、「退職者の増加(自己都合による欠員の増加)」が30.8%となり、社会全体で広まる人手不足の状況が伝わってくる結果となった。
一方で、2024年4月からトラックドライバーなどの残業上限規制が始まる物流業界では、人材確保の理由に「即戦力の補充」が56.8%、「年代別人員構成の適正化」が34.7%、「労働時間短縮への対応」が33.7%となり、即せ引力の補充が全体より、8.7ポイント高くなるなど切迫感を感じさせる結果が出ている。
採用の課題「求職者の質が低い」36.3%、「入社後、早期退職してしまう社員が増加している」30.3%、「応募者管理が煩雑」28.8%
この調査は2023年7月12日から18日にかけて実施したもので、2023年1~7月に中途採用業務を担当し、募集活動をしており、採用費用の管理・運用に携わっている人事担当者1600人を対象とした。今年で4回目となる。
はじめに、直近半年間における正社員の過不足感を聞き、前年度と比較した。それによると、正社員全体では「余剰を感じている」が「25.4%」から「27.3%」へと1.9ポイントの上昇だった。これに対して、「不足を感じている」は「43.1%」だから、正社員全体で人手不足が起こっていることがわかる。特に、IT人材などのスペシャリスト人材については「不足を感じている」が「47.9%」と多いのが特徴的だ。
続いて、中途採用を実施した理由では、最多になったのが「即戦力の補充」で「48.1%」だった。次いで、「既存事業の拡大」が「31.6%」、「退職者の増加(自己都合による欠員の増加)」が「30.8%」、「将来の幹部候補・コア人材の確保」が「27.1%」となった。
一方で、2024年4月からトラックドライバーなどの残業時間上限規制に向けた人材確保を進めている「運輸・交通・物流・倉庫」業界の結果によると、最多は「即戦力の補充」で「56.8%」と全体よりも高くなった。
このほか、「年代別人員構成の適正化」が「34.7%」、「労働時間短縮への対応」が「33.7%」となり、世代交代を見据えている企業も多いのかもしれない。
つぎに、中途採用活動の課題を聞くと、「求職者の質が低い」が「36.3%」で最多になった。次いで、「入社後、早期退職してしまう社員が増加している」が「30.3%」、「応募者管理が煩雑」が「28.8%」、「母集団(応募者数)が確保できない」が「28.7%」と続いている。
中途採用全体の積極度53.8%...前年比0.9ポイントの微増 業種・職種ともに、経験者の採用には意欲的
また、直近半年間の採用基準の変化について質問した。書類選考について今後は採用基準を「厳しくした・する予定」の企業は「12.5%」から「18.6%」に増加し、6.1ポイントの上昇になった。
面接の採用基準では、「厳しくした・する予定」が「13.9%」から「22.3%」に増加し、8.4ポイントの上昇を見せ、採用基準を「甘くした・する予定」の担当者は「15.7%」から「11.5%」に4.2ポイント下降している。
さらに、今後の採用以降についても質問している。中途採用全体で積極的に採用する担当者は前年比0.9ポイント増の「53.8%」となった。一方で、業界・職種ともに未経験者と経験者のどちらを採用するのか聞くと、未経験者を採用するのが「41.6%」に対して、経験者を積極的に採用するのが「52.1%」とやや高かった。
また、入社後ギャップを減らす目的で企業が求職者へ「リアルな仕事情報の事前提供」=「RJP(Realistic Job Preview)」について、意図的に行っているかどうかを質問すると、「行っている」は「77.8%」、「行っていない」は「22.3%」となった。なお、RJPを行った結果、入社後の定着率が「増えた」という回答は「33.1%」になっている。
今回の調査に、マイナビのキャリアリサーチラボ研究員の朝比奈あかり氏は、以下のようにコメントを寄せている。
「直近半年間の中途採用では、『即戦力の補充』が重要視され、スペシャリスト人材の不足感が顕著でした。
企業は今後も積極的に中途採用を行い、即戦力人材を確保しようとしています。
企業の人手不足感が強いため売り手市場だと言われがちですが、IT人材など需要の高いスキルを持つ求職者にオファーが集中している可能性があります。
そのため、今後求職者は未経験の業種・職種に転職したい場合、企業が即戦力と判断するスキルを身に付けることが重要となるでしょう」