1ドル=152円が第2防衛ライン、155円が第3防衛ラインか
今回の「為替介入の有無」と今後のドル円相場の動き、エコノミストはどう見ているのか。
野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏はリポート「1ドル150円の第1防衛ラインを突破して円安が進行:為替介入が実施されたか」(10月4日付)のなかで、「日本政府が円買いドル売り介入を実施した可能性が指摘されているが、実際のところは明らかになっていない」としている。
ただし、鈴木財務大臣が「(1ドル=150円の)水準そのものは判断基準にならない。あくまでボラティリティの問題」との見解を示したことについては、こう指摘する。
「あくまで米国政府に配慮したポーズだろう。米国政府は、先進各国に対して、為替の特定水準を意識した為替介入や為替の方向性に影響を与えることを狙った為替介入は、為替操作(マニュピュレーション)に当たるとして認めない姿勢だ。
投機によって為替が過度に変動する際に、それを抑えることを狙うスムージングオペの為替介入のみを容認しているのである」
そのうえで、政府は「1ドル150円」を防衛ラインと考えている、とみている。そして、次のように説明する。
「その水準を超えると、円安に弾みがついてしまうことを警戒しているのである。現在政府は、物価高対策を柱とする経済対策の策定を進めているが、円安による輸入物価の上昇は、そうした政策効果を損ねてしまうことから、政府は円安進行を食い止めたいと考えている」
今後の展開については、こう予測する。
「政府は、1ドル150円を第1防衛ライン、昨年の円安のピークであった1ドル151円台終わりを意識して1ドル152円を第2防衛ライン、1ドル155円を第3防衛ライン、と考えているのではないかと推察される。
為替介入の実施だけで、円安を食い止めることはできない。為替介入はあくまでも時間稼ぎ、時間を買う政策である。東京市場での1日の為替取引が平均で50兆円を上回ると見込まれるなか、1日あたり数兆円規模の為替介入で為替の需給に大きな影響を与えることはできない」