平均年収3000万円超えも!上場するM&A仲介会社ランキング 7社の直近の業績と社員の年収をチェック

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   東証は2023年9月20日、ジャパンM&Aソリューションの東証グロース市場への上場申請を承認しました。上場予定日は同年10月24日。この上場がめでたく実現すると、東証に上場するM&A仲介会社は7社となります。

   この7社、みなさんは全部言えますか? また、M&A仲介会社といえば高給というイメージがありますが、果たしてどのくらいもらっているのでしょうか。財務諸表をもとにまとめてみました。(こたつ経営研究所)

日本のM&Aアドバイザーは「両手取引」がほとんど

   まずは上場7社を、直近の期末決算の売上高で並べてみましょう。

1. 日本M&Aセンターホールディングス
2. M&Aキャピタルパートナーズ
3. ストライク
4. 名南M&A
5. オンデック
6. M&A総合研究所
7. ジャパンM&Aソリューション

   この7社は、すべて「M&A仲介事業」を軸に展開する会社です。

   実はM&A(企業の合併と買収)に関わるビジネスには、「両手取引」と「片手取引」があります。「両手取引」とは、売り手と買い手に同じM&Aアドバイザーがつく形態で、仲介会社は双方にアドバイスを行い、双方から仲介手数料を受け取ります。

   「片手取引」とは、売り手と買い手に異なるM&Aアドバイザーがつく形態で、アドバイザリーは片方いずれかのみにアドバイスを行い、片方から助言料を受け取ります。

   日本のM&A仲介会社は、一部片手取引を行っている場合があるものの、ほとんどが「両手取引」です。例えば被買収企業の総資産の10%を、売り手と買い手から5%ずつ手数料として受け取るという形で行われています。

   両手取引については、河野太郎氏が2020年12月に自らのサイトで「双方から手数料をとる仲介は利益相反になる可能性がある」と指摘したことがありました。両手取引は買い手の利益を優先するインセンティブが働きやすく、売り手の利益を損なうおそれがあるというのです。

   これに対し、「両手取引は欧米ではあり得ない」と河野氏を支持する声がある一方で、業界からは、日本の中小企業M&A市場においては「買い手が多い売り手市場なので、買い手の利益のみを優先することはない」「買い手を決めるのは買収額以外の要素もあり、調整が必要な仲介の方が適している」という反論もあります。

   なお、東証上場企業にも、かつて大手上場企業を中心として「片手取引」のアドバイザリー業務のみを行っていたGCAという会社がありましたが、2021年にグローバル投資銀行がTOBを実施し、上場廃止となっています。

売上首位の日本M&AセンターHDに不適切会計が発覚

   それでは売上高順に、上場7社の企業概要をまとめてみましょう。

   売上高1位の日本M&Aセンターホールディングス(東証プライム)は1991年4月、各地域の有力な公認会計士・税理士が中心となって設立されました。2007年にはM&A支援専門会社として初の東証一部上場を果たしています。

   創業者は、日本オリベッティ社(当時)でTKCとともに全国の会計事務所にコンピューターシステムを納めていた分林保弘氏。2022年6月に代表権のない取締役会長となり、2023年6月から名誉会長を務めています。

   2023年3月期の売上高は413億1500万円、営業利益は152億9800万円、当期純利益は98億4200万円。営業利益率は37.0%と高い水準を誇っています。

   なお、同社は2021年10月1日付けで持株会社制に移行後、同年12月に売上高を前倒し計上する不適切会計が発覚し過年度決算を訂正。翌2022年8月には元常務取締役が所得税法違反容疑(同社株式売却益の申告漏れ)で刑事告発される不祥事が続きました。

   2022年2月発表の不適切会計の「調査報告書」によると、「会社の経営・業務が営業売上重視の傾向が強すぎた」「個人に課せられた営業目標数値が高すぎた」うえに、厳格な業績管理が行われていたことが要因になったおそれがあるとのことです。

   2023年3月末時点の連結従業員数は1,083人。純粋持株会社のため従業員はおらず、給与も不明ですが、2021年3月期末までさかのぼると、単体従業員数653人、平均年齢34.3歳、平均勤続年数3.4年、平均年間給与1234.4万円というデータがあります。

M&Aキャピタルパートナーズは上場企業最高給

   売上高2位のM&Aキャピタルパートナーズ(東証プライム)は2005年10月設立。創業者は積水ハウス出身、現代表取締役で発行済株式の4割以上を所有する中村悟氏です。

   2022年9月期の売上高は207億0600万円、営業利益97億1300万円、当期純利益67億9400万円。営業利益率は46.9%と、日本M&AセンターHDを上回る高水準です。

   2022年9月末時点の連結従業員数は229人、単体従業員数159人。従業員(単体)の平均年齢は32.0歳、平均勤続年数は3.15年、平均年間給与は驚異の3161.3万円。東洋経済「平均年収が高い会社ランキング 全国トップ500」(2023年3月)では2位のキーエンス(2182万円)に1000万円近い差をつけて1位に輝いています。

   売上高3位のストライク(東証プライム)は1997年7月設立。創業者は太田昭和監査法人(当時)出身の公認会計士で現代表取締役の荒井邦彦氏です。

   2022年9月期の売上高は107億2700万円、営業利益は42億2400万円、当期純利益は29億6200万円。営業利益率は39.4%と、M&Aキャピタルパートナーズに次ぐ業界2位の高い水準です。

   2022年9月末時点の従業員数(単体。以下同じ)は220人、平均年齢は35.8人、平均勤続年数は2.7年、平均年間給与は1438.2万円です。

M&A総研HDの営業利益率は53.8%

   売上高4位のM&A総合研究所ホールディングス(東証グロース)は2018年10月設立、2022年6月にM&A総合研究所として東証グロース市場に上場し、2023年3月に持株会社制に移行しました。

   創業者で現代表取締役の佐上峻作氏は、発行済み株式の72.56%を所有。2013年にネット広告プラットフォームのマイクロアド(2022年東証グロース市場上場)に入社、2015年にオウンドメディア構築・運営支援のスマートメディアを設立という経歴です。

   2022年9月期の売上高は39億1100万円、営業利益は21億0300万円、当期純利益は13億2600万円。営業利益率53.8%は、M&Aキャピタルパートナーズを上回る業界最高水準です。

   2022年9月時点での従業員数(単体。以下同じ)は110人、平均年齢は29.7歳、平均勤続年数は1.1年。平均年間給与は786.1万円と同業他社と比べて低く、営業利益率の高さを踏まえると将来的な給与水準の引き上げ余地があるといえるかもしれません。

   売上高5位の名南M&A(名証セントレックス)は2014年10月設立。1984年設立の名南経営コンサルティングの子会社で、代表取締役の篠田康人氏は親会社の出身者です。

   東海エリアでトップクラスのM&A実績を誇りますが、ローカルの中小企業案件が多いせいか、2022年9月期の売上高は13億8200万円とTOP3と比べるとだいぶ小ぶり。営業利益は3億5200万円、当期純利益は2億3000万円。営業利益率25.5%です。

   2022年9月末時点の従業員数(単体。以下同じ)は53人。平均年齢は38.5歳、平均勤続年数3.1年、平均年間給与は737.4万円です。給与水準が同業他社よりもやや低いのは、案件の規模だけでなく、グループ会社とのバランスが影響しているのかもしれません。

ジャパンM&Aソリューションが10月に新規上場

   売上高6位のオンデックは2007年設立。代表取締役社長の久保良介氏と代表取締役副社長の舩戸雅夫氏(ともにJCB出身)によって創業されました。2020年12月29日に東証マザーズ(現・東証グロース)に上場を果たしています。

   2022年11月期の売上高は13億3900万円、営業利益は2億1300万円、当期純利益は1億5100万円。売上高は名南M&Aとほぼ同水準ですが、営業利益率は15.9%と低めです。

   企業サイトには「中小企業のM&A支援に特化した会社」とあり、「事業規模に制限を設けない」(小規模の案件も取り扱う)、「リーズナブルな報酬体系」(最低保証報酬額を弾力的に設定)が利益率に影響しているのかもしれません。

   2022年11月末時点での従業員数(単体)は50人、平均年齢は35.87歳、平均勤続年数は2.56年、平均年間給与は906.4万円と、売上規模の割に高水準です。

   売上高7位のジャパンM&Aソリューションは、2023年9月20日に東証グロース市場への上場申請を承認され、10月24日に上場が予定されている会社です。

   創業者で現代表取締役社長の三橋透氏は三和銀行出身。2018年2月にフィンテックグローバル(東証スタンダード)の100%子会社の代表取締役に就任し、M&A事業や投資事業に従事していましたが、2019年11月に独立し創業しています。

   2023年10月期(予想。9月20日発表)の売上高は7億0600万円、営業利益は1億5000万円、当期純利益は1億0100万円。営業利益率は21.2%の見込みです。

中小企業庁の「中小M&A推進計画」が追い風に

   なお、中小企業庁は2021年4月、中小M&Aの推進に向けて今後5年間に実施すべき官民の取組を「中小M&A推進計画」として取りまとめました。中小企業の経営資源の散逸を回避するとともに、事業再構築を含めた生産性の向上等を目指すものです。

   現在、中小M&Aは年間3000~4000件実施されている一方、潜在的な譲渡側は約60万者も存在すると予想されているとのこと。

   政府は「経営資源の散逸の回避」「生産性向上等の実現」「リスクやコストを抑えた創業」の3つの観点から中小M&Aを推進するとしており、業界の成長は当面続くといえるのかもしれません。

こたつ経営研究会
こたつ経営研究会
有価証券報告書や決算説明書などの公開情報を分析し、会社の内情に思いをめぐらすニューノーマルな引きこもり。昼間は在宅勤務のサラリーマンをしながらデイトレード、夜はネットゲームをしたりこたつ記事を書いたりしている。好きなピアニストはグレン・グールド。嫌いな言葉は「スクープは足で稼げ」。
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