中国は、日本の「失われた30年」と同じ道をたどるか?
不動産業界に広がる信用不安に焦点を当てたのが、日本政策投資銀行経済調査室の合津智裕と岳梁氏のリポート「調整が続く中国不動産市場と経済への影」(9月29日付)である。
【図表2】は、中国経済で深刻化している「灰色のサイ」(巨額の債務)問題の渦中にある主な大手不動産のリストだ。サイは普段はおとなしい動物だが、いったん暴走し始めると手が付けられず、爆発的な破壊力を持つ。潜在的リスクの比喩だ。
このリストの2番目の「碧桂園」(はくけいえん)は中国最大の不動産会社。優良経営とみられていたのに、突然今年8月、約1兆円の最終赤字を発表して衝撃を与えた。リポートではこう指摘する。
「中国不動産市場では、恒大集団が2023年8月に米国破産法を適用申請するなど、信用不安が広がっている。背景には、政府主導の企業の過剰債務削減や投資依存の成長からの脱却などの構造改革がある。構造改革は鉱工業が先行し、不動産業の債務削減は2021年に本格化したばかりである」
仮に、不動産市場のハードランニングを回避できたとしても、難題が待っている。バブル崩壊後の日本が「失われた30年」と言われるような、人口減を主な理由とする長期デフレが中国経済を襲うリスクがあるのだ。
【図表3】は、中国国民の家計の消費と貯蓄の意向を示したグラフだ。お金を消費より貯蓄に回す割合が増えていることがわかる。リポートはこう結んでいる。
「直近の経済指標で、消費の弱さやディスインフレ傾向が示されたなか、政府は消費拡大をはじめ諸政策を打ち出したが、大規模な財政出動はなく景気刺激効果は限定的とみられる。
人口減などバブル後の日本と類似する点があるなか、内需の弱さによるデフレ化や潜在成長率の低下などの、いわゆる『日本化』への懸念は、当面続くと考えられる」