「こんな笑顔が、また見られるなんて」家族も涙...余命わずかな患者さんに、看護師長が贈った意外なプレゼントとは?【部下の心を動かした『胸アツ』エピソード「3」後編】(前川孝雄)

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そこで、おじいさんが見たものは?!

   一瞬不思議そうな表情をしたおじいさんでしたが、孫くらいの年齢の看護師さんの言うがまま、目を閉じたまま部屋に入ります。

   「はい、もういいよ!」おじいさんが目を開けると、何と!...ねじり鉢巻きをした職人さんが、机でこしらえたカウンター越しに笑顔で立っていたのです。

「へい旦那、今日は何を握りますか?」

   おじいさんだけの特別な寿司屋さんが、そこにはあったのです。

「ト、トロお願いします。大将」

   おじいさんは、元気だったころと同じように注文をしました。

   おじいさんの前には、頬が落ちそうなトロの握りが置かれます。しかし、おじいさんは流動食すら食べられない胃ろうの状態。

   しかし、奇跡が起きました。この病室に来て以来、口からものを食べられなかったおじいさんが、なんとトロを二口も食べたのです!

「あぁ、うまい。大将...あ、ありがとう」

   おじいさんは、入院してから一度も見せたことのない笑顔になりました。

   おじいさんの車いすを押してきたあと、固唾をのんで様子を見守っていたおばあさんは、その場で泣き崩れてしまいました。

   事前に看護師長からサプライズプレゼントを持ち掛けられ、嬉しさ半分不安も抱いていたのですが、おじいさんが見せる久しぶりの笑顔に感極まったのです。

   涙を流しながら担当の看護師の手を取って「ありがとう、ありがとう」と何度も繰り返したといいます。担当の看護師も涙がとまりません。

   これを見守る看護師たちと看護師長も、目に涙をためた顔を互いに見合わせながら、胸の前で小さな拍手を贈っていました。

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