「ケジメは済んだ。これで、タレントの広告起用を見直していた上場企業は、元に戻るのではないか」。――そんな見方が経済界から出てきそうだ。
ジャニーズ事務所が2023年10月2日、記者会見を開いて解体的な出直しを発表した。そんななか、帝国データバンクが同日、「特別企画:『ジャニーズタレント』CM等起用の上場企業動向調査(2023年9月30日時点)」を発表したが、会見に注目し、様子見の企業が続出していることが分かった。
帝国データバンクの調査担当者は、「あの会見で、企業がタレントの起用を辞める理由がなくなった」と話している。
「タレント起用」見送り企業、多くが海外事業中心
帝国データバンクの調査は、同社が保有する企業情報や外部情報から、「ジャニーズタレント」をテレビCM・企業広告に使っていることが判明した上場企業65社が対象だ。うち、各社の発表や報道資料により、半数近い33社が9月30日までに起用を見直すことが判明した【図表1】。
経済同友会の新浪剛史代表幹事が9月12日、「ジャニーズ事務所のタレントを起用する企業は、国際的な非難の元になる」との発言もあり、企業の「ジャンーズ離れ」が一気に加速した。実際、帝国データバンクの調査によると、起用しないと表明した33社の海外事業比率を調べると、「50%以上」が6社、「30%以上」が10社と、海外に顧客のいる企業が多かった【図表2】。
調査を担当した帝国データバンク情報統括部の飯島大介氏は、J‐CAST 会社ウォッチ編集部の取材に、「なかには売り上げの70%を海外に占めるメーカーもありました。一方、起用を続ける企業の多くが国内相手のところが多かった」と話す。
ところが、9月下旬からの1週間で起用を取りやめた企業は1社だけ。ジャニーズタレントの「起用見直し」は停滞していたわけだ。飯島さんはこう話す。
「ジャニーズのファンは大市場ですからね。しがらみから抜けられず、簡単に切ることもリスクが大きいから、記者会見でどこまでジャニーズ事務所が変わるか、固唾を飲んで見守っていたのだと思います」
「広告に起用する企業のための記者会見だった」?
――あの記者会見を、起用していた企業はどう見たと思いますか。
飯島さん「あれで起用を辞めざるを得なかった理由がほとんどクリアされて、タレントを使ってはいけない理由がなくなったと思います」
――具体的にはどういう点ですか。
飯島さん「彼らタレントは、『元ジャニーズ事務所タレント』になりました。藤島ジュリー景子氏と、完全に資本が切れて、資産も継承しない、別の新しい会社を立ち上げて、タレントはそことエージェントとして契約するわけです。
これまで、上場企業をひるませていたのは、人権侵害の企業(ジャニーズ事務所)と取引することでした。タレントそのものに罪はないということは、新浪さんも言っています。
場合によっては、アフラックが櫻井翔さんと個人契約したいと言っていたように、元ジャニーズタレント個人と契約することも可能になるはずです」
――会見では東山紀之社長たちも、反省の態度を見せましたからね。
飯島さん「それが大きいと思います。前回の会見では、事務所の名前を残すとか、藤島ジュリー景子氏の株がそのままとか、性加害を受けた被害者とどう向き合うのかとか、企業統治の面で問題が大ありでした。どこまで本気で改革を進めるのか、上場企業は注視していました。
そういった上場企業の不安に、全部対応するための記者会見だったと思います」
――となると、また、「元ジャニーズ事務所タレント」を起用する企業が増えるわけですか。
飯島さん「一概には、わかりません。ただ、若いタレントはいいでしょうが、故ジャニー喜多川氏の所業を知っていたと思われる、中堅・ベテランのタレントは企業も使いづらいでしょうね」
(福田和郎)