大企業製造業「改善」、非製造業「絶好調」は本物か? 日銀短観を深読み...エコノミストが警戒「今そこにある、人手不足と中国の危機」

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輸入の2割を頼る中国経済減速が、IT関連メーカーに大打撃を...

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中国リスクが今後の不安材料(写真はイメージ)

   一方、中国経済の低迷と輸入環境の悪化が、今後の懸念材料だと指摘するのが、野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏だ。

   木内氏は「事前予想を上回った企業景況感(9月短観):物価安定傾向が強まり2%の物価目標達成は遠のく:中国経済の下振れは引き続きリスク」(10月2日付)は、今回の短観で大きな注目点だった、原油価格の上昇や円安の進行は、企業に悪影響を与えていなかったことがわかった、と説明する。大企業はその分を価格に転嫁させていたからだ。

   しかし、それが新たな問題が生させている。

「原材料価格の上昇を製品価格に転嫁する動きが相応に進んだことが、企業の収益環境を改善させるとともに、それがさらなる価格転嫁の動きを一巡させることで、物価全体の安定傾向が強まってきている。
日本経済にとって、賃金上昇率を上回る物価上昇率は、潜在的な景気の下振れリスクである。企業の中長期の物価見通しが安定してきたことで、来年の春闘では個人が期待するほどの賃上げとはならないと考えられる。それが個人消費の下振れにつながる可能性があるだろう」
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外国人観光客増加で、大企業・非製造業は好調だが(写真はイメージ)

   そこに、輸出の不振と中国経済の減速が加わってくる。そして、こう結んでいる。

「他方、輸出環境の悪化も日本経済の下振れリスクである。今回の短観調査では、2023年度の大企業の輸出見通しはプラス1.6%と、前年度のプラス16.1%を大幅に下回っている。海外での製品需給判断DIも、前回比4ポイント悪化した。
海外経済の動向で特に注意したいのが中国経済である。中国経済の低迷が、貿易を通じて世界経済に与える悪影響は深刻だ。
主要国の中で最も打撃を受けやすいのは、中国向け輸出が全体の2割を占めるなど、中国経済への依存度が高い日本だ。現時点で中国の成長率が1%ポイント下振れると、日本の成長率は0.65%下振れる計算となる(木内氏試算)。実際には、この先数年を展望すれば、中国の成長率の下振れは1%ポイントでは済まないだろう。
2022年の日本から中国向けの輸出の中で、22.6%は半導体を含む電気機械、21.4%は半導体製造装置を含む産業用機械などの一般機械である。中国経済の下振れは、輸出の減少を通じて日本の資本財メーカー、IT関連メーカーに大きな打撃となるだろう」

(福田和郎)

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