新車が売り切れるまで、半導体が持ち直すかがカギ
こうしたデータを、エコノミストはどう読み解いているのか。
「問題は、自動車の新車の潜在需要が消化し切れるまでに、半導体市況が持ち直すか否かにある」と指摘するのは、第一生命経済研究所主席エコノミストの藤代宏一氏だ。
藤代氏は、リポート「経済の舞台裏:日銀短観9月調査と株式市場 鍵は回復のバトン」(10月2日付)のなかで、日銀短観の大企業の業況判断指数のグラフ【図表】を示しながら、こう説明した。
「大企業製造業は自動車(6月調査プラス9から、9月調査プラス15)が大きく改善し、その影響もあって化学、窯業・土石、業務用機械が上昇し、鉄鋼もまずまずの水準を維持した。
その反面、IT関連財の不調から電気機械(プラス2からマイナス2)はマイナス圏に転落し、汎用機械、生産用機械なども低下した。
製造業全体としては当面、自動車生産の回復に牽引される構図が見込まれる。問題は、新車の潜在需要を消化し切るまでに、半導体市況が持ち直すか否かであろう。2024年前半までに半導体市況が好転すれば、回復のバトンは無事に引き継がれそうだが、それが実現しないとエンジンを失う形になりそうだ」
もっとも、藤代氏は、「絶好調」の大企業非製造業でも懸念材料をこう指摘する。
「企業のDX投資に支えられ、情報サービス(プラス45からプラス42)、対事業所サービス(プラス26からプラス32)、通信(プラス14のまま)は良好な水準を維持した。
なお、(企業の人手の過不足判断を指数化した)雇用人員判断DI(全規模・全産業)はマイナス33へと1ポイント低下。労働集約型のサービス業において人手不足は深刻度合いを増している」
人手不足の解消が、今後の回復のポイントになるというわけだ。