「雇用調整助成金」の不正受給、累計670件が公表 絶たない不正発覚、経営基盤の弱い新しい企業が「コロナ禍」で手を染めた

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不悪質な場合は刑事告訴の可能性も...「信用失墜は避けられない」

   雇用調整助成金等の不正受給を直近の売上高が判明した214社でみると、「1億円未満」が84社で最も多く、構成比で39.2%を占めた。次いで、「1億円以上5億円未満」が79社(構成比36.9%)で続き、売上高「5億円未満」の企業が全体の76.1%と、約8割を占めた。

   不正受給が公表された企業は、売上規模が小さい傾向が特徴として出ている。一方、「50億円以上100億円未満」でも2社、「100億円以上」でも3社が公表された。【グラフ3参照】

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グラフ3 雇調金不正受給公表企業 売上高別(東京商工リサーチ調べ)

   コロナ禍で雇用を維持するため、雇用調整助成金に頼った企業は、中小企業から上場企業まで幅広い。迅速な支給のため手続きを簡素化したことも奏功し、雇用調整助成金を利用申請の企業数は大幅に増えた。

   しかし、一方で「申請誤り」や「不正の発覚」による支給決定取消は、各都道府県の労働局が遡って受給状況を調査した結果、23年6月末までに1852件、金額ベースで338億6000万円分が取り消された。

   不正金額が100万円以上のほか、悪質な事例と判断されると社名や代表者名、受給額などが公表され、特に悪質な場合は刑事告訴の可能性もあり、コンプライアンス(法令順守)的な信用失墜が避けられない。

   また、受給金額に違約金と延滞金を加えた返還のほか、5年間にわたり雇用関係助成金を受給できなくなるため、資金繰りにも重大な影響を及ぼしかねない。

   東京商工リサーチは、

「雇用調整助成金の財源は企業が負担する雇用保険料で賄われている。コロナ禍の支給増大で、保険料率は22年4月以降、1000分の3から1000分の3.5に引き上げられた。それだけに不正受給は許されるものではなく、制度維持のためにも対策強化が求められる」

   としている。

   なお、調査は雇用調整助成金または緊急雇用安定助成金を不正に受給したとして、各都道府県の労働局が2020年4月1日~23年8月31日までに公表した企業を集計、分析した。前回調査は6月29日発表。

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