新型コロナが2023年5月から5類に移行して、行動制限がなくなった現在、国内外に旅行する人が増えている。
そんななか急増しているのが、インターネットで予約したホテルや航空券をキャンセルした時のトラブルだ。
国民生活センターが2023年9月20日、「インターネットで予約したホテルや航空券のトラブル-キャンセル条件など、契約内容は自分自身でよく確認!-」という調査を発表、注意を呼び掛けている。
自分の不注意から出たミスが多い。せっかくの楽しい旅行で泣かないための4つ秘訣とは――。
姓と名のミスの訂正で、キャンセルになるから全額支払え
国民生活センターによると、旅行トラブル全体に占めるインターネット予約の割合は、ここ数年50%前後で推移している。ところが、その件数は、コロナが落ち着いてきた2022年度は4488件と、2021年度(2306件)の2倍に増加した【図表】。
2023年度に入ってもトラブル増加の勢いが止まらない。また、キャンセル料支払いなど相談額も、2021年度の平均約9万3000円から、2022年度は約11万9000円に増加した。
こんな事例が代表的だ。
【事例1】航空券予約で姓と名を逆にしたミス、訂正するだけでキャンセル分の航空券を二重に支払わされた
国内事業者が運営する旅行予約サイトから、国際線の航空券を予約した。姓と名を逆にしていたと分かったので、旅行予約サイトに電話して訂正を申し出ると、「キャンセルをして取り直す必要がある。キャンセル分の航空券の代金は返金しない。規約とおりの対応だ」と言われた。自分の確認不足だったことは否めないが、ささいなミスで全額返金されず、航空券代金を二重に支払うことに不満だ。(2022年9月・40歳代女性)
【事例2】ホテルの宿泊予約をキャンセルしたら、キャンセル料が宿泊料の100%かかると言われた
国内旅行を計画し、ホテルの公式サイトから直接予約した。その後、都合が悪くなりホテルへキャンセルを申し出た。宿泊予定日の1週間前に申し出たにもかかわらず、キャンセル料が宿泊料の100%だと言われた。交渉できないか。(2023年3月・40歳代女性)
同時予約のホテルと航空券、キャンセル料がホテルはゼロ、航空券は全額
【事例3】ホテルと航空券の予約をキャンセルしたら、ホテルは無料なのに航空券は100%のキャンセル料がかかった
海外事業者が運営する旅行予約サイトで、ホテルと航空券を同時に予約した。「〇月〇日まではキャンセル無料」と表示されていた。都合が悪くなったのでキャンセルすると、ホテルは問題なく無料でキャンセルできたが、航空券はキャンセル料が100%かかった。
旅行予約サイトのページにはホテルはキャンセル無料と記載されていたが、航空券は特に記載されていなかったと思う。旅行予約サイトに連絡すると、ホテルと航空券は別事業者なので対応が違うと言われた。納得がいかない。(2023年5月・30歳代女性)
【事例4】飛行機が欠航となったのに全額返金されない。旅行予約サイトと航空会社に問い合わせたが、責任のなすり合い
海外事業者が運営する旅行予約サイトで、国際線の航空券の予約をした。代金約20万円はクレジットカード翌月1回払いで決済した。その後、旅行予約サイトから「フライトがキャンセルされた」とメールが届いた。メールには、有償で別のフライトを予約するか、払い戻しを選択するよう記載されていたので、払い戻しの申請をした。
3か月後、旅行予約サイトで使える約10万円分のポイントが返金されたが、航空会社の都合によるキャンセルなので、全額返金してほしい。旅行予約サイトのカスタマーサポートに全額返金を求めたが、「航空会社都合の場合は航空会社のキャンセルポリシーに基づいた対応となる」と言われた。
航空会社に問い合わせたが、「個別の案件は、旅行予約サイトを通してしか対応しない」と言われ、対応されない。(2022年12月・20歳代男性)
【事例5】返金を求めて旅行予約サイトにメール、「24時間以内に返答する」との返信が延々
海外事業者が運営する旅行予約サイトで、国内のホテル2人分を予約し、クレジットカードで支払った。キャンセルの必要が生じたので、ホテルに電話して予約のキャンセルをした。その後、決済した料金を返金してほしいと思い、旅行予約サイトに毎日メールを送り続けたが、毎回、「24時間以内に返答する」という返信しかこない。(2023年3月・60歳代男性)
予約は焦らず入力し、確認画面はスクリーンショットを撮って保管しよう
こうしたトラブルに巻き込まれないよう、国民生活センターではこうアドバイスする。
(1)対面で詳しく説明を受けられる店舗と異なり、インターネット予約は消費者自身が申し込み完了前まで、すべて契約内容をしっかり確認する必要がある。旅行予約サイトで販売される航空券や宿泊施設は、それぞれのプランや商品ごとに契約内容(キャンセル料金、部屋からの景観などの条件)が異なる。
一方がキャンセル料無料でも、他方は有料の場合もある。条件はリンク先に記載されているので、見落とさないようにする。「キャンセル料が100%かかる」という条件の場合、入力ミスがあっても、予約が確定すると修正ができず、料金を請求される。
だから、予約時は焦らずに入力し、入力項目が確認できる画面では、記録のために画面のスクリーンショットを撮って保管しよう。申し込み内容に問題がないことを確認のうえで、申し込みボタン(送信ボタン)を押す。
(2)店舗と異なり、契約内容が記載された資料が手渡しでもらえるわけではない。契約後に事業者から送付されてくる予約確認メールは、キャンセルの可否などの契約内容が明記された大切な情報だ。記載内容をよく確認したうえで、旅行が終わるまで大切に保管する。
サイトのマイページで確認できる場合は、内容が異なると思ったらすぐに事業者に連絡する。事業者とのやりとりは、送信日時がわかる形で保管する。
事業者の問い合わせフォームから連絡する場合は、フォームに入力した内容(画面)をスクリーンショットで保管する。
(3)旅行予約サイト事業者の情報をチェックする。日本の事業者か、海外の事業者か。旅行業法上の登録を受けているかどうか。
海外事業者を利用する場合は、カスタマー対応窓口の情報(電話、メールの連絡方法や窓口開設時間など)を確認。サイトが日本語表示でも、対応が英語になる場合が多い。
また、トラブルになった際、日本の法律などを用いた交渉が難しい場合があることを知っておこう。
(4)トラブルになった場合は消費生活センター(消費者ホットライン「188(いやや!)」に相談しよう。また、海外事業者とのトラブルについては、国民生活センター越境消費者センター(CCJ=https://www.ccj.kokusen.go.jp)でも相談を受け付けている。
(福田和郎)