採用業務クラウド「採用係長」を提供する株式会社ネットオン(大阪市北区)は2023年9月14日、「採用係長」の登録ユーザーである中小企業の人事・採用担当者を対象とした「最低賃金引き上げに関するアンケート調査」の結果を発表した。
それによると、「最低賃金を下回ったため、賃金を引き上げる予定」が40.9%。「最低賃金を下回っていないが、賃金を引き上げる予定」は22.4%となり、あわせて63.3%が賃上げする予定があるようだ。
また、「引き上げ後の最低賃金額に負担を感じるか」を聞くと、「非常に負担に感じている」が52.6%と過半数を超え、さらに「多少負担に感じている」の37.6%をあわせると、90.2%となる。最低賃金の改定による中小企業への影響は少なくないようだ。
「賃金を引き上げる予定」は63.3% 前年の調査から21.1ポイント増加
毎年10月に行われる最低賃金の改定において、2023年は、全国平均が初めて1000円を超えて、1004円(加重平均)となった。上げ幅は前年を更新して過去最大となるなか、物価上昇と人手不足を背景とした賃上げにより、難しい舵取りを迫られる中小企業は少なくない。
そうした中、今回の最低賃金の改定は中小企業にどのような影響を与えるのか調査を行った。この調査は2023年8月17日から31日までにかけて、「採用係長」利用事業所の人事・労務担当者210人にインターネットで調査を行った。
はじめに、最低賃金の改定による賃上げ予定について質問した。すると、「最低賃金を下回ったため、賃金を引き上げる予定」が「40.9%」。「最低賃金を下回っていないが、賃金を引き上げる予定」は「22.4%」となり、賃上げする予定のある企業は「63.3%」となった。
ネットオンは、「賃金を引き上げる事業所の割合は、2022年9月に実施した前回調査(引き上げ予定 42.2%/有効回答数 258)から21.1ポイント増加しています」としている。
一つ目の質問で「賃金を引き上げる予定」と答えた133人にその理由を聞くと、「最低賃金の引き上げに対応するため」が最多で「70.7%」が回答した。そのほか、「従業員の定着率向上(引き留め)のため」が「30.8%」、「人材採用を有利に進めるため」が「29.3%」となり、「業績が回復した(伸びた)ため」は「3.0%」に留まった。
また、「賃金を引き上げる予定」の企業へ「引き上げ後の最低賃金額に負担を感じるか」を聞くと、「非常に負担に感じている」が「52.6%」と過半数を超えた。さらに「多少負担に感じている」の「37.6%」をあわせると、「90.2%」の企業が負担に感じていることがわかった。
すべての企業担当者に対して、最低賃金の引き上げによってもっとも賃金が低くなる職種と、その賃金(時給換算)について質問した。すると結果は、引き上げ後に賃金が高くなるのは、「理美容」(平均時給:1473円)、「技術者(開発、IT)」(同:1425円)、「技術職(建築、土木、電気工事)」(同:1301円)となった。
一方で、賃金の低い職種は「介護、福祉」(同:1028円)、「警備」(同:1052円)、「調理」(同:1056円)という結果になった。
また、最低賃金の引き上げに関する意見や感想を求めたところ、人件費の上昇による経営悪化の懸念や、扶養内で働く従業員の労働時間減少に伴う課題などを中心に、以下のような回答が寄せられたという。
●最低賃金の引き上げに対する意見
・今の物価高騰に必要な事だと思います(農林・漁業/~4名/東京都)
・大手と中小で基準を変えるなどの柔軟な対応が必要(そのほか生活関連サービス/20~29名/東京都)
・どんどん最低賃金が上がり、雇う側も即戦力を求めざる負えない状況では、働きたくても働けない方が増えると思います(飲食/5~9名/埼玉県)
●経営悪化に対する懸念
・賃金引き上げ自体は非常に良いことだと思います。しかしながら建設業界全体に言えることだけど工事単価の引き上げもしてもらわないと、耐えられない会社さんも沢山出て来ると思う(建築・不動産/5~9名/福岡県)
・全体的に賃金上昇はとても良い事ですが、それに伴って社会保険料も上がっていくのが会社としては痛いです(運輸/50~99名/広島県)
・最低賃金を上げるのは賛成だが、受注金額や材料費高騰に対する施策も併せて行わないと疲弊するばかりだと思う(警備/10~19名/広島県)
・介護・福祉事業所に関しては厚生労働省が定める報酬単価が引き上がらない限り、賃金改善は困難(介護・福祉/100~199名/福岡県)
こうした調査結果に対して、ネットオンでは以下のようにコメントしている。
「賃金の引き上げは経営への直接的な影響だけでなく、扶養内での就労を希望する従業員の就労時間調整に伴う人手不足や、社会保険の負担増など間接的な影響も少なくありません。
さらに現政権は、2030年代半ばまでに平均時給1500円への引き上げを目標として掲げることを表明しており、賃上げ幅のさらなる拡大が予想されます。
それらへの対応のために、『時給に見合った人材を雇用したい』という意見も散見されました」
「今後の最低賃金の引き上げを踏まえ、採用方針を見直す中小企業が増加することも考えられるのではないでしょうか。」