岸田政権「年収の壁」解消策にエコノミスト物言い...「チマチマ働かず、壁を超えよ!は政府の傲慢」「壁を超えたら損は、パートの間違った思い込みかも」

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パート主婦に切実、将来の1万円より今の1万円!

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パートで働くと収入の上限を意識する(写真はイメージ)

   本来、非正規雇用の人々を正規雇用にするためのバックアップ資金であるはずのキャリアアップ助成金を、「年収の壁」対策に使うことに批判的なのが、日本総合研究所調査部理事の西沢和彦氏だ。

   西沢氏のリポート「キャリアアップ助成金が「年収の壁」解消策なのか?」(9月19日付)は、まだ政府案の新聞報道の段階(2023年7月5日付日本経済新聞)を元にした分析だ。

   政府案のグラフ【図表1】を示しながら、「年収106万円未満でチマチマ働かず、思い切って壁を一挙に乗り越えよ」というのが政府の発想だろう、と指摘した。そして、3つの点で疑問が残るという。整理してまとめるとこうだ。

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(図表1)政府案(日本総合研究所の作成)

   (1)パート主婦のニーズに合致しない、迂遠な経路だ。キャリアアップ助成金は、企業が申請手続きをし、認められれば企業に助成される。家計に給付されるものではない。年収の壁の解消策としてパート主婦に認知されるが疑問だ。

   (2)パート主婦は、「年収の壁」解消のために、キャリアアップ助成金が想定する正社員、あるいは正社員に近い働き方になることを望んでいるだろうか。パートのままのほうがよいという人も多いだろう。

   (3)人それぞれ異なる、現在のおカネと将来のおカネの重みの違いがある。パート主婦の中には、子どもが手を離れた老後より、教育費や住宅ローン返済がのしかかる、今まさにおカネが必要な人が多い。(正社員の働き方である)「老後の保障が充実!」と言われても、魅力を感じない人もいる。将来の1万円より今の1万円なのだ。

   そして、西沢氏はこう結んでいる。

「年収の壁は、一朝一夕には解決出来ない。厚生年金保険の適用・非適用に関し、基準が不明瞭な現状を是正すべく、国から明確な基準を示すなど当面の課題を確実にこなしつつ、制度再構築に向けた議論に着手するダブルトラックが求められる」
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