解散総選挙が年内にあるかどうか、日銀を縛る2つのシナリオ
日本銀行は、金融市場にショックを与えないために、事前に政策修正のアナウンスをする必要があるが、その時期を熊野氏はこう説明する。
「植田総裁は、賃金に言及することが多くなっている。来年の春闘が政策変更の重要な要因になっていることは明らかだ。
では、日銀は3月あるいは4月の緩和解除をどのくらいの時期からアナウンスしていくのだろうか。これが円高への修正の起点になると考えられる。早ければ 12月会合(12月18・19日)だとみられるが、1月会合(1月22・23日)の可能性もある」
「実は、隠れた要因には、衆議院の解散総選挙がある。もしも、2023年内に解散があれば、日銀は2024年に入ってフリーハンドでアナウンスを決められるだろう。しかし、2023年の解散がなく、2024年前半にその可能性がくすぶっていると、3・4月のマイナス金利解除は難しいのではないか」
そして、2023年内に解散総選挙がある場合と、ない場合をこう予測する。
「年内総選挙の場合、1ドル150円が円安のピークになり、日銀が2024年初から出口戦略に着手して、1ドル120~130円の円高水準で推移するだろう。
逆に、解散総選挙が年内にない場合、2024年9月の岸田首相の自民党総裁任期までのどこかに解散が後ずれする。もしも、この解散のタイミングが日銀の出口戦略の縛りになれば、2024年1~3月は再び150円に向けてじわじわと円安になるだろう」
いずれにしろ、岸田首相次第というわけだが、「第3のシナリオ」がある。米経済の行方だ。熊野氏はこう結んでいる。
「そのほかの焦点は米経済である。米利上げが長期化すると、2024年中のどこかで景気がスローダウンし、長期金利は低下するだろう。これはドル安・高圧力になる。
こうした景気減速感が鮮明になれば、解散総選挙を意識して日銀が緩和を現状維持していたとしても、円安圧力は後退していく。いずれにしても、1ドル150円台前半は円安のピークになり、解散総選挙の思惑によって日銀の出口戦略も変わっていくというのが今後のストーリー展開になるだろう」
(福田和郎)