従業員の健康づくりを重要な経営課題と位置づけ、生産性や企業価値の向上につなげる「健康経営」――。
その「健康経営」について、「内容を知っている。取り組んでいる」と答えた中小企業の経営者は18.2%。「内容は知っているが、まだ取り組んでいない」という経営者は28.6%にのぼった。アクサ生命保険(東京都港区)が2023年9月4日に発表した「社長さん白書 2023」でわかった。
アクサ生命は、共済・福祉制度を引き受けている商工会議所の会員企業を中心に、健康経営の導入や実践のサポートに力を入れているが、まだまだその必要性があることが浮き彫りとなった。
心の健康を支えるためにやりたいことは「ストレスチェック」!
アクサ生命が、全国の中小企業経営者6449人に聞いた「社長さん白書2023」を発表した。これは全国47都道府県の中小企業経営者を対象にした意識調査の結果に基づくもので、同社が共済・福祉制度を引き受けている商工会議所の会員企業などの協力を得た。
調査では、従業員の健康づくりや福利厚生制度、経営者自身が人生において一度はやってみたいことなどを聞いた。
それによると、「健康経営」について「内容を知っており、取り組んでいる」と答えた経営者は18.2%だったのに対して、「内容は知っているが、まだ取り組んでいない」と答えた経営者は28.6%と、約3割にのぼった。
これらを合わせた、「(健康経営の)内容を知っている」と答えた経営者は46.8%で、約半数だった。
「内容は知らないが、聞いたことはある」と答えた人は24.5%。「今回、初めて知った」という経営者も、28.7%と少なくなかった。
企業の規模別でみると、「内容を知っており、取り組んでいる」と答えた経営者は、従業員「10人未満」の企業で10.8%、「10人以上50人未満」が27.5%、「50人以上100人未満」で49.4%、「100人以上」の企業では52.5%にのぼった。
企業規模が大きくなるほど、健康経営の認知度や関心が高くなっていることがわかる。
次に、経営者自身や従業員の心とからだの健康増進について、会社内で実施していることを教えてください(複数回答)と聞いたところ、「働き方改革の実践」と答えた経営者が31.2%で最も多かった。次いで、「感染症対策、補助の提供」が28.5%、「運動習慣の実践、提供」の21.5%が続いた。【図1参照】
また、従業員の「心の健康」をサポートするために取り組みたいこと(複数回答)を、経営者に聞いたところ、59.4%の経営者が「ストレスチェックの実施」と答え、ダントツだった。【図2参照】
ただ、実際にストレスチェックを実施していると答えた経営者は11.3%=図1参照=と1割ほどにとどまり、大きなギャップが生じていることがわかった。
原材料費や人件費の上昇、売り上げ減... 物価高への不安募る
新型コロナウイルス感染症の5類への引き下げについても、聞いた。引き下げが御社にとってプラスに働くと思いますか(単一回答)との問いに、「プラスに働く」と答えた経営者は46.5%にのぼり、「プラスにはならない」と答えた経営者(16.1%)を大きく上回った。
これを業種別でみると、「プラスに働く」と答えた経営者が多かったのは「サービス業」が55.4%、「卸売業」が50.4%、「小売業」の47.9%と、対面でのサービス・接客の場面が多い企業が上位となった。【図3参照】
さらに、新型コロナウイルス感染症の5類への引き下げが「プラスに働く」と答えた経営者に、どんな分野でプラスになると思いますか?と聞いたところ、「対面でのサービス拡大」と答えた経営者が79.2%と最も多かった。
次いで、「社内コミュニケーションの向上」が36.1%、「海外からの観光客の拡大」が14.6%で続いた。「海外渡航サービスの拡大」が9.8%。「その他」6.6%だった。
昨今の「物価上昇」について、会社経営に影響はありましたか(単一回答)との問いには、「非常に悪い影響が出ている」(19.4%)、「やや悪い影響が出ている」(42.0%)と答えた経営者は、合わせて 61.4%にのぼり、多くの経営者が物価上昇による悪影響を実感していることがわかった。
なかでも、「製造業」は72,4%と、7割超の経営者が悪影響を実感している。次いで、「電気・ガス・水道業」が66.9%、「小売業」が66.2%、「運輸・通信楽」の65.8%が続いた。【図4参照】
昨今の物価上昇で、中小企業の経営者は「原材料費、輸送費などのコストの増加」(68.2%)や「人件費の増加」(38.4%)、「売り上げの減少」(36.9%)に、不安に感じているようだ。【図5参照】
福利厚生制度の取り組みに、「休暇取得の推奨」と「退職金制度の整備」
調査によると、従業員の福利厚生制度で取り組んでいることとして、最も多かったのは「有給休暇などの休暇取得の推奨」で、57.2%の経営者がそう答えた。次いで、「退職金制度の整備」の41.7%だった。
また、従業員の福利厚生制度で取り組みたいことを聞いたところ、「社員旅行等レクリエーションの充実」が最も多く、33.9%にのぼった。「退職金制度の整備」が26.2%で続いた。【図6参照】
また、従業員の退職金について、どのように準備していますか? どのように準備したいと考えますか?(複数回答)と聞いたところ、約4分の1にあたる25.5%の中小企業の経営者が「準備していない」と答えた。
一方、準備したい方法としては「中小企業向け退職金共済制度」が最も多く、35.2%にのぼった。次に、「積立型の生命保険」の31.4%だった。【図7参照】
さらに、経営者自身が人生で一度はやってみたいことを聞いたところ、「海外旅行」や「世界一周旅行」が。また、人生で家族や従業員にやってあげたいこと、もしくは地域に貢献したいことはなんですか? との問いには、「賃金アップ」や「社員旅行」、「ボランティア活動」が目立った。
なお、調査は全国47都道府県の中小企業経営者を対象に、2023年4~6月にインターネットで実施。回答者数は6449人だった。