SDGs、高い認知度だが...価格より「サステナビリティ優先」は1割未満 年齢の高いほうがサステナブル意識は高かった

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   社会や地球環境の「サステナビリティ」への意識が高まっている。

   上場企業はサステナビリティについての基本方針や自社の取り組みの開示が求められるようになり、また消費者も買い物時のエコバッグの持参をはじめ、少量の小分けした食材を買ったり、プラスチックごみが出にくい商品を選んだりすることが増えているようだ。

   そうしたなか、ニッセイ基礎研究所が消費者のサステナビリティに関わる意識調査を、2023年8月に実施。生活研究部上席研究員の久我尚子氏が、比較可能な項目については過去の調査と対比しながら、消費者の現状をレポートした。2023年9月15日の発表

「サステナビリティの事柄は珍しいものではなくなっている」

   調査ではサステナビリティについてのキーワードの認知状況を把握するため、サステナビリティに関わる約40のキーワードをあげて、「聞いたことがある」ものを尋ねたところ、20~74歳全体で、「SDGs」が70.0%で最も多かった。

   次いで、「再生可能エネルギー」が56.7%、「フードロス」が49.0%、「カーボンニュートラル」が48.5%、「健康寿命」の45.3%、「ヤングケアラー」の42.4%と、4割以上で続いた。【図表1参照】

   「聞いたことがあるものはない」と答えた人は14.0%を占めた。

   また、「内容まで知っている」ものについても同様に「フードロス」(43.2%)や「SDGs」(43.0%)などが上位にあがり、約4割を占めた。一方、「内容まで知っているものはない」と答えた人は、21.0%を占めた。

   上席研究員の久我尚子氏は、

「つまり、内容まで十分に理解されているキーワードは半数に満たないものの、『SDGs』はじつに7割、『再生可能エネルギー』は6割の消費者が耳にするようになり、サステナビリティに関わる事柄は珍しいものではなくなっている。また、『コンプライアンス(法令遵守)』などの企業活動に関わるキーワードと比べて、『フードロス』や『健康寿命』などの生活に関わるもののほうが理解は浸透しているようだ(調査対象者の就業率は 67.4%)」

とみている。

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図表1 サステナビリティについてのキーワードの認知状況(複数回答、%。ニッセイ基礎研究所調べ)

   さらに、「聞いたことがある」キーワードのうち、「内容まで知っている」との回答が占める割合をみると、「ヤングケアラー」(88.6%)や「フードロス」(88.2%)は約9割を占めて高い。

   これらのほか、「健康寿命」(76.8%)や「LGBTQ+」(76.6%)、「3R(Reduce、Reuse、Recycle)/4R(3R+Refuse)」(76.4%)、「コンプライアンス(法令遵守)」(76.1%)、「マイクロプラスチック」(75.0%)、「児童労働・強制労働」(73.8%)が7割以上を占めた。

「これらのキーワードは生活との関わりが比較的強いために、耳にしたことがあれば内容の理解も進んでいるのだろう」(久我氏)

キーワードの認知度 男性は企業活動、女性は日常生活で高く

   今回の調査で、約1年半前の調査と比較可能なキーワードについてみると、「聞いたことがある」と答えた割合は、「カーボンニュートラル」がプラス5.1ポイント、「児童労働・強制労働」がプラス3.9ポイント上昇している。

   その一方、「ワ―ケーション」はマイナス9.0ポイントで大幅に低下。また、調査対象の約3分の1のキーワードで、わずかに低下している。

   「内容まで知っている」と答えた割合は、「児童労働・強制労働」がプラス6.9ポイント、「カーボンニュートラル」がプラス5.3ポイント、「再生可能エネルギー」(プラス3.8ポイント)、「SDGs」(プラス3.3ポイント)で上昇しているほか、大半でわずかながら上昇している。

   一方、「内容まで知っているもの(キーワード)はない」と答えた割合は、マイナス19.2ポイントと、大幅に低下した。

   こうした調査結果に久我氏は、

「今回と約1年半前の調査対象は必ずしも一致していないためにわずかな差についての議論は難しいが、たとえば5月に新型コロナウイルス感染症が5類に引き下げられて以降、消費者意識が外へ向かうことで内省的な意識がやや弱まり、サステナビリティについての関心がわずかながら弱まりつつも、内容についての理解は全体的に深まっているという見方もできるだろう」

と分析した。

   サステナビリティについてのキーワードを男女で比べると、男性では「デジタルトランスフォーメーション(DX)」(男性24.1%、女性11.7%)が女性よりプラス12.4ポイント高く、「コーポレートガバナンス」(男性22.2%、女性10.6%)が女性より11.6ポイント高く、女性を上回った。

   一方、女性では「ヤングケアラー」(男性30.3%、女性54.5%)が男性よりもプラス24.2ポイント高く、「フードロス」(男性40.6%、女性57.3%)がプラス16.6ポイント、「健康寿命」(男性40.2%、女性50.4%)は10.2ポイント、男性を上回った。【図表2参照】

   男性では企業活動に関わるキーワード、女性では日常生活に関わるキーワードの認知度が高い傾向(調査対象者の就業率は男性79.6%、女性55.2%)があることがわかった。

   これを年代による違いでみると、全体的に年齢が高いほど認知度は上がり、60歳以上では「健康寿命」や「地方創生」、「再生可能エネルギー」、「ヤングケアラー」、「コンプライアンス(法令遵守)」、「カーボンニュートラル」、「マイクロプラスチック」、「フードロス」、「児童労働・強制労働」、「ダイバーシティ」などで20歳代、30歳代を大幅に上回る。

   一方、「知っているもの(キーワード)はない」と答えた人は、20歳代で22.6%、30歳代で22.8%と2割超を占めた。なお、「LGBTQ+」と「フェムテック」は70~74歳が最下位だった。

   ところで、よく世間では「Z世代はサステナブル意識や社会貢献意識が高い」と言われるようだが、調査結果を見ると、年齢が高いほどサステナビリティに関わるキーワードを理解している。

「これは『昔の若者と比べればZ世代を含む今の若者はサステナブル意識が高いが、現時点を比べれば年齢が高いほどサステナブル意識は高い』という理解が妥当である。現時点においては、人生経験が長く、社会課題などについて幅広い知識を蓄えていると見られる高齢者のほうが、サステナビリティについての理解も進んでいるようだ」

と、久我氏は指摘している。

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図表2 生年代別に見たサステナビリティに関わるキーワードで「聞いたことがあるもの」(複数回答。ニッセイ基礎研究所調べ)

価格よりサステナビリティ優先は、1割未満

   さらに、調査ではサステナビリティな消費行動についても聞いた。

   日ごろの消費生活で、サステナビリティに関わる消費行動について約30の項目をあげて実施状況を聞いたところ、20~74歳全体で「買い物の時はエコバックを持参するようにしている」と答えた人が73.8%にのぼり、最も多かった。

   次いで、「リサイクル可能なゴミを分別して出している」が57.0%、「洗剤やシャンプーなどは詰め替えできる製品や量り売りのものを買うようにしている」が51.0%、「長く使える製品を買うようにしている」の45.7%と、4割以上で続いた。

   一方、「価格が安くても、生産や製造時に人権に問題のある製品は買わないようにしている」(8.0%)や「価格が安くても、地球環境や社会に悪影響のある製品は買わないようにしている」(7.5%)、「価格が多少高くても、環境や社会問題に配慮された製品を買うようにしている」(5.4%)、「価格が多少高くても、環境や社会問題に積極的に取り組む企業の製品を買うようにしている」(4.3%)など、製品購入時に価格よりもサステナビリティを優先する行動は、いずれも1割に満たないことがわかった。

   男女別でみると、男性は「電気自動車などのエコカーを選んだり、エコドライブを実践している」(男性11.6%、女性8.9%)で、女性より2.7ポイント高く、「新品を買うより、シェアリングサービスを利用する」(男性2.8%、女性2.0%)は0.8ポイント上回った。【図表3】

   女性は「外出の際はマイボトルを持参するようにしている」(男性22.1%、女性46.7%)が男性より24.6ポイント高く、「洗剤やシャンプーなどは詰め替えできる製品や量り売りのものを買うようにしている」(男性39.2%、女性62.7%)が23.4ポイント高かった。「買い物の時はエコバックを持参するようにしている」(男性62.6%、女性84.9%)は、女性が22.3%ポイントも高かった。

   しかし、その半面、女性でも価格よりもサステナビリティを優先した行動は1割に満たないという。

「つまり、女性のほうが男性よりサステナビリティを意識した消費生活を送っている。ただし、現在のところ、女性でも価格よりもサステナビリティを優先して製品を買う消費者はごくわずかである」(久我氏)

   年代による違いをみると、全体的に年齢が高いほど選択割合は上がり、20歳代の19.8%、30歳代の16.1%が「特にしていることはない」と答えた。価格よりもサステナビリティを優先した行動は、高年齢ほど多い傾向があった。全体では1割に満たないが、70~74歳では「安価でも生産時に人権問題のある製品は買わない」(19.5%、全体よりプラス11.4ポイント)と「安価でも社会環境に悪影響のある製品は買わない」(17.7%、全体よりプラス10.2ポイント)で、全体を1割以上、上回った。

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図表3 生年代別に見た日常生活におけるサステナビリティに関わる消費行動(複数回答。ニッセイ基礎研究所調べ)
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