三菱UFJ信託、「暗号資産」に本気! グループで国産ステーブルコイン、国内信託初の「暗号資産信託」も検討

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   三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)とその連結子会社の三菱UFJ信託銀行は、国内法に準拠したステーブルコインの発行・管理基盤で、次世代デジタル資産プラットフォーム「Progmat Coin(プログマコイン)」を活用し、グローバルに流通可能な「国産ステーブルコイン」の発行に向けた共同検討を開始した。2023年10月2日に、株式会社Progmatをスタートさせる。

   三菱UFJ信託はブロックチェーン企業のGinco(東京都中央区)と、国内の信託銀行で初めてとなる「暗号資産信託」の提供に向けた検討の開始を発表している。ブロックチェーン技術を駆使した「デジタル資産」の取り組みに、前のめりのようだ。

決済手段に使える「国産ステーブルコイン」利便性の最大化が目標

   「ステーブルコイン」とは、取引価格が安定することを目的に、米ドルや金などの資産と連動するように設計された暗号資産のことだ。

   暗号資産の市場が年々拡大するなか、ビットコイン(BTC)に代表される暗号資産は、ボラティリティ(価格変動)が大きいことや法定通貨とは異なり、中央管理者が存在しないことが特徴となる。

   もっとも、ビットコインなどは裏付けされる資産がないため、日々のボラティリティが非常に大きくなる。そのため、価格が安定せず、実用性に乏しいという課題があった。

   しかし、ステーブルコインは法定通貨にペッグ(紐付け)されているため、価格が安定することが大きな特徴。そのため、日々の決済手段としても利用しやすいと考えられているほか、為替の暴落などのリスクヘッジにもなる。

   MUFGと三菱UFJ信託が、そんなステーブルコインの発行に向けて共同検討を進める。

   この共同検討は、「Progmat Coin」基盤を用いたステーブルコインブランドの一つとして、金融機関が連携して、利用者の圧倒的な利便性の向上に資する「国産のステーブルコイン」の発行を目標に、金融機関横断的にビジネス面・技術面の知見を共有。

   そして、技術検証や具体的な実務構築を加速させ、速やかに社会実装することが目的だ。日本発でグローバルなデジタルアセット市場の発展に寄与することを目指す。

   三菱UFJ信託は2023年6月施行の改正資金決済法に則ったステーブルコインを発行するためのインフラとして、すでに「Progmat Coin」基盤の開発を主導している。

   イーサリアム(ETH)などのパブリックブロックチェーンを含む各種ブロックチェーン上でのステーブルコインの発行と、なめらかな相互移転・交換を企図し、各種技術提携も発表してきた。

   「Progmat Coin」基盤を用いたさまざまなブランドのステーブルコインは、取り扱う仲介業者が関係当局へのライセンス登録を完了し次第、発行・流通が可能となる予定という。

   なお、発表資料によると、発行依頼者(委託者)は三菱UFJ銀行。発行者(受託者)は三菱UFJ信託銀行、および他の業務提供可能な信託銀行との共同受託などが担う。

   裏付資産(預金)の運用先は三菱UFJ銀行。SC基盤開発は株式会社 Progmat(設立後)が推進する。

   仲介者が日本国内でステーブルコイン(電子決済手段)を業として取り扱うためには、改正資金決済法で新設された「電子決済手段等取引業」のライセンスを取得する必要がある。

   法律施行から「1号業者」が新たにライセンスを取得するまでに、おおむね1年を要する(2024年6月頃)ことを想定。「商用化 Phase1」を、2024年前半に実現することを目指す。

機関投資家、ポートフォリオとして「暗号資産」が持てる

   三菱UFJ信託は、ブロックチェーン企業のGincoと「暗号資産信託」の提供に向けた検討も開始している。

   国内の信託銀行で初めてのサービスで、提供が可能になれば、企業にとっては資金調達の手段が多様化し、機関投資家にとってはコストの負担減と投資機会の損失を防げるというメリットが見込める。

   暗号資産の市場規模の拡大で、暗号資産のカストディ業務(機関投資家の代理人として、有価証券の保管・管理する業務)は今後10年間で、1兆円を超える市場に成長する可能性を秘めているとされ、国内での態勢整備が急務となっている。

   トークンの発行による資金調達は、セキュリティトークン(STO)や暗号資産といったトークンの種類によって規制が異なるものの、いずれもIPO(株式公開)よりも比較的容易に調達が可能という。

   暗号資産は改正資金決済法が適用され、インカムゲインは得られない。ただ、資金調達者側が形成する経済圏に参加できるという利点が見込める。

   現状、企業がトークンの発行によって資金調達したいと考えても、ベンチャーキャピタルなどの機関投資家たちは直接、暗号資産を投資対象にできないため、実務負担が重くなる。そうした課題解決のカギを信託銀行が握っている。

   暗号資産信託は、事業者と投資家の取引後のトークンの発行者から暗号資産(クリプト)を受け取り、信託受益権として機関投資家に還元する。信託の持つ法的性質の転換機能によって暗号資産を保有せず、経済的所有権のみ取得できるという仕組みだ。

   つまり、機関投資家はポートフォリオとして暗号資産を持てるようになるわけだ。

   トークンの発行体によって適切な税制が適用され、機関投資家によるトークンへの投資が可能なスキームを提供。日本がトークンの発行で魅力的な環境となることを目指す。

   その中で、三菱UFJ信託は暗号資産信託のスキームの開発や受託者として信託業務を提供するほか、暗号資産のカストディ業務を担う。

   Gincoは業務用暗号資産ウォレットの機能提供とトークン管理に必要な知見を示す。共同検討には新生企業投資やフィナンシェなどの計9社が加わり、今年度中の商用化を目指す。

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