就職先や転職先、投資先を選ぶとき、会社の業績だけでなく従業員数や給与の増減も気になりませんか?
上場企業の財務諸表から社員の給与情報などをさぐる「のぞき見! となりの会社」。今回取り上げるのは、関東1都6県で「中華食堂日高屋」などの外食チェーンを展開するハイデイ日高です。
ハイデイ日高は1973年、中華料理「来々軒」として現代表取締役の神田正氏が現在のさいたま市大宮区に創業しました。ラーメン店としては当時画期的だったチェーン展開にいち早く取り組んで業績を伸ばし、1998年に現社名に変更しています。
1999年に株式店頭登録。2004年に中華そばを税込み390円に値下げし、現在もこの価格を維持しています。2005年に東証二部上場、2006年に東証一部(現・プライム)に指定替え。2023年3月期末の店舗数は440店舗で、2026年2月期までに500店舗を目指しています。
コロナ禍の「時短営業協力金」60億円で黒字化
それではまず、ハイデイ日高の近年の業績の推移を見てみましょう。
ハイデイ日高の売上高は、2020年2月期に過去最高の422億円を記録しましたが、コロナ禍の影響をもろに受け、2021年2月期には295億円、2022年2月期には264億円まで落ち込みました。
営業損益も、2021年2月期にはマイナス28億円、2022年2月期にはマイナス35億円の赤字に。ただし、2022年2月期には時短営業の「協力金収入」と「雇用調整助成金」の計60.8億円が営業外収益に計上されて、最終黒字を確保。2023年2月期にも同様に計17.4億円が計上されています。
2024年2月期の業績予想は、売上高が前期比15.3%増の440億円、営業利益が同387.8%増の30億円、当期純利益が同21.8%増の18.5億円となる見込みです。
なお、2024年2月期の第1四半期(3~5月)は、売上高117億円、営業利益12億円と好調。報道によると、第1四半期、7月単月、上半期(3~8月)の売上高は、それぞれ過去最高を更新したとのことです。
赤字の中で出店した新規店舗が、V字回復に貢献
ハイデイ日高は「飲食店チェーン関連事業」の単一セグメントですが、有価証券報告書には次の3つの業態が記されています。
・「日高屋」:「中華そば日高屋」や「中華食堂日高屋」「来来軒」を展開
・「焼鳥日高」:「焼鳥日高」や「大衆酒場日高」を展開
・「その他業態等」:「中華一番」や「大衆食堂日高」「中華そば神寄」「中華食堂真心」「屋台料理台南」とFC向け売上を含む
2023年2月期の販売実績は、「日高屋」(店舗数405軒)が357.6億円で全体の94%を占め、「焼鳥日高」(同27軒)が17.9億円、「その他業態等」(同8軒)が6124万円でした。
なお、ハイデイ日高はコロナ禍でも新たな店舗展開を行っており、2021年2月期には14店舗を出店(退店24店舗)、2022年2月期には24店舗を出店(退店14店舗)しています。
この時期の出店の特徴は、従来からの「駅前立地」への出店を進める一方、新たに「ショッピングモール内」や「駅商業施設内」「ロードサイド」への出店を行っており、これが直近の業績好調の要因のひとつとなっているようです。
また、一部店舗における配膳・運搬ロボットの試験導入や、タッチパネル式オーダーシステム、キャッシュレス決済といった取り組みも、ソーシャルディスタンスの確保や従業員の負担軽減につながっているとのことです。
「特別感謝金」の支給で、平均500万円突破
ハイデイ日高の従業員数は、2019年2月末の822人(臨時従業員数3596人)から、2020年2月末の838人(同3,680人)、2021年2月末の859人(同2,845人)と、コロナ禍の時短営業等の影響でパート・アルバイトののべ人数は減少したものの、社員数は減っていませんでした。
2022年2月末は847人(同2255人)と社員数、パート・アルバイト数ともに減少しましたが、2023年2月末は853人(同3091人)と、業績回復とともに増加しています。
ハイデイ日高の平均年間給与は、コロナ禍の業績悪化で450万円台まで減りましたが、2023年2月期には500万円を突破しました。平均年齢は36歳1か月、平均勤続年数は9年8か月です。
なお、ハイデイ日高では、急激な物価上昇による経済環境の変化を受け、2023年2月28日付けで社員に対し1人5万円から45万円の「特別感謝金」の支給を行っており、これが上記平均給与に反映されています。
ハイデイ日高の採用サイトを見ると、総合職の募集は新卒採用のみで、中途採用の募集は「店長候補」「地区長候補」のみとなっています。正規雇用労働者の中途採用比率は25.2%(2022年度)で、新卒生え抜き中心の会社といえそうです。
期末業績予想の上方修正で、株価上昇
ハイデイ日高の株価は、コロナショックの2020年3月に一時1195円の安値を付けましたが、その後は業績とともに右肩上がりに回復しています。
2023年4月には、2026年2月期までの3年間を対象とする「中期経営計画」を発表。「成長性・収益力」の目標として、売上高480億円、営業利益率7.5%を掲げました。
ところが8月21日には、早くも2024年2月期の期末業績予想を上方修正。売上高440億円→470億円、営業利益30億円→41.5億円、営業利益率6.8%→8.8%に引き上げており、中計の目標を達成してしまう勢いです。
これを受けて、ハイデイ日高の株価は急上昇。2023年9月4日には3,000円を突破し、現在は2,800円前後を推移しています。
なお、ハイデイ日高の社名は、創業者の神田氏の出身地である埼玉県日高市に由来するとともに、「当社の店舗で食事をしていただき、気分が高揚(High)した一日(Day)を送っていただきたい」という意味が込められているとのことです。(こたつ経営研究所)