幸せとは?...人としての生き方に気づかせてくれる上司が求められている
浅井さん もう一例ですが、弊社のラグビーチームに外国人の名監督がいて、チームメンバーは皆その人について行きたいと言う。しかし、その監督は選手にラグビーの話は一切しないらしいのです。メンバーに訊くと、「人間たるものこうあるべし」との話は時々聞くが、ラグビーの指導は受けたことがない。でもそれが、自分たちの生き方にとって、とてもためになっているというのです。
前川 スキルを教えるのではなく、人としていかに充実して生きるかを支援できる上司ということですね。
浅井さん それが、究極の理想の上司像かなと思いますね。いろいろな人と面談を通じても、そう感じます。
大原さん 浅井さんの発言や姿勢に通じるのですが、それは「部下と本気で向き合うこと」に尽きるのではと思います。
「一生懸命、いい仕事ができていますか」「どんなことで悩んでいますか」と個別に、親身に問いかけられれば、ついて行きたくなりますよね。褒めて伸びる人もいれば、怒られて伸びる人もいる。さきほどの1on1の話しのように、多くかまってほしい人と、放っておいてほしい人がいる。そうした部下一人ひとりの特性を見極めながら接し、適切なフォローをしてあげられることが重要だと思います。
前川 お二人のお話は、共通していますね。部下は一人ひとり異なりますから、それに寄り添い、本人自身に気づかせて、幸せになれるよう支援する。それも、仕事だけではなく、人としてもということですね。
長年人材育成に取り組んできた私自身共感することばかりですし、実際に実践されているので、読者の管理職や人事、経営者の皆さんに勇気をもたらすことを確信しています。
本日は、本当にありがとうございました。
【プロフィール】
大原 侑也(おおはら・ゆうや)
NTTコミュニケーションズ株式会社
ヒューマンリソース部 人材・組織開発部門 部門長
2001年NTTコミュニケーションズ(株)入社。主にプロジェクトマネージャーとして公共分野のICT活用を推進。その後、飲食業界のITコンサルティング、ソリューションサービスの企画を経て、スマートエデュケーション推進室長として、学校教育・企業教育のDX化に従事。2023年7月より現職。社員のキャリア自律と対話協働する組織開発に取り組む。
浅井 公一(あさい・こういち)
NTTコミュニケーションズ株式会社
ヒューマンリソース部 人材・組織開発部門 キャリアコンサルティング・ディレクター
企業内キャリアコンサルタントとして、ミドルシニアを中心に約3,000人のキャリア開発に携わり、面談手法を指導したマネージャーも1000人を超える。圧倒的面談量をもとに築き上げた独自のキャリア開発スタイルにより75%の社員が行動変容を起こす。共著に「ビジトレ」(金子書房)、キャリア支援者のための私塾「浅井塾」(HRラボ社)を開講。
前川 孝雄(まえかわ・たかお)
株式会社FeelWorks代表取締役
青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授
人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業FeelWorksを創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「eラーニング・上司と部下が一緒に学ぶ パワハラ予防講座」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年働きがい創造研究所設立。情報経営イノベーション専門職大学客員教授、一般社団法人 企業研究会 研究協力委員、一般社団法人 ウーマンエンパワー協会 理事なども兼職。連載や講演活動も多数。
著書は『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)、『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、『コロナ氷河期』(扶桑社)、『50歳からの幸せな独立戦略』(PHP研究所)、『本物の上司力~「役割」に徹すればマネジメントはうまくいく』(大和出版)、『人を活かす経営の新常識』(FeelWorks)、『50歳からの人生が変わる 痛快! 「学び」戦略』(PHP研究所)等30冊以上。最新刊は『部下全員が活躍する上司力 5つのステップ』(FeelWorks、2023年3月)。