部下から人気ナンバーワンの上司の取り組みとは?
前川 そうした理想の会社像を持つなかで、御社のような大組織であればなおさら、現場を束ねる管理者のあり方がとても重要になると思います。最後に、改めてお二人が考えるこれからの管理職に期待される役割や、理想の上司像について伺えますか。
浅井さん 以前にある部署で、AKBのように理想の上司の選抜総選挙をやりました。上位3人の上司だけを公表しましたが、一人、ぶっちぎりの人気ナンバーワン上司がいたのです。
前川 ぶっちぎりとはすごい。どういうタイプの方なのでしょうか。
浅井さん その人は早い時期から、自ら部下との1on1面談をやっていました。しかし、部下によって上司と距離を置きたい人や、頻繁に相談したい人などさまざまです。そこで、面談も月に1回15分の部下と、1日置きに30分行う部下など、相手に応じて変えているのです。部下面談となると、全員一律の頻度や時間にして、それが「平等」と考えがちです。そうではなく、相手の希望や状況に応じて「公平」に行うわけです。
前川 ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(以下、DEI)で重視されるようになってきたエクイティ(公平性)を実践されていたのですね。
浅井さん また、その人は各地のコールセンター業務を本社の立場で指導する立場で、毎週地方センターに出張に出ます。その際、半日は会議などの用事を済ませ、もう半日は自らオペレーター席で第一線の顧客対応にあたるのです。
ですから、現場にアドバイスをする際も、現場スタッフが日々当面する実務や困りごとなど、すべて分かったうえで行います。「この仕事をこうしなさい」と言うのでなく、「私がこう行ったように、こうしては」と言える。だから、スタッフが信頼して「この人について行こう」となるのです。
さらにその人は、スタッフに研修をさせたり、飲み会をするなどは一切しません。それなのに、部下が自然と自己研鑽し、コミュニケ―ションを取り合い、成果を出し、成長していくのです。
前川 上司自身が率先垂範しながら、部下への内発的動機づけもできているのですね。