「スーパーの目立つ場所に商品陳列してもらうのと同じ」 グーグル社長、正当性訴え
これまでの独禁法の議論では、独占的な企業が商品の価格を引き上げるなどして消費者、ユーザーの不利益になるかどうかが注目された。
だが、メールや検索、SNSなどのサービスを無料で提供し、利用者の閲覧履歴や位置情報などの膨大なデータを収集して広告で稼ぐビジネスモデルは、消費者には利用料がかからないため、独占の弊害が感じられにくく、規制を求める世論が盛り上がりにくい面がある。
グーグルについて司法省は23年1月、ネット広告配信の企業を買収するなどで市場を独占し、競争を妨げているとして別の訴訟も提起している。司法省はメタ(旧フェイスブック)も同法違反で提訴済みだ。
また、欧州では欧州連合(EU)が9月6日、デジタル市場法の規制対象としてグーグルやメタ、アマゾン・ドット・コム、中国バイトダンス(字節跳動)など6社を指定。独禁法とは別の法体系だが、大手ITに自社サイトでの自社優遇禁止などを迫るものだ。
今回のグーグルに対する独禁法訴訟の審理は、10週間程度と見込まれる。米メディアはグーグルのスンダー・ピチャイ最高経営責任者(CEO)ら幹部も証人として呼ばれる見通しだと報じており、判決は数か月以内に出る見通しだ。ただし、控訴が予想され、最終的な決着には数年かかるとみられる。
公判開始を前に、グーグルのケント・ウオーカー社長は9月8日、「食品メーカーがスーパーに対価を払って目立つ場所に商品を陳列してもらうのと同じ」と述べたと伝えられる。
法律論としての結論(判決)がどう出るにせよ、世界の検索市場を牛耳る巨大企業のトップがスーパーの棚をたとえに自身の正当性を訴えるのには、違和感を禁じ得ないが、今回の訴訟の行方が世界的な大手IT規制の流れにも大きな影響を与えるのは疑いない。(ジャーナリスト 白井俊郎)