米司法省と11の州が、ネット検索最大手、グーグルを反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いで訴えた訴訟の公判が2023年9月12日、首都ワシントンの連邦裁判所で始まった。
市場支配力を使って他社の参入を排除してきたとして、違法行為の中止や事業分割を含めた是正措置を講じるよう求めたもので、グーグルが独占を保つために不当な行為に及んでいたかが焦点となる。
独禁法を巡る大型の独禁法裁判は、1998~2002年の米IT大手マイクロソフト(MS)訴訟以来約20年ぶり。グーグルをはじめとしたGAFAと呼ばれる巨大IT企業が影響力を拡大する中、デジタル時代の競争政策のあり方が改めて問われることになる。
アイフォーンもグーグル検索を初期設定契約、グーグルからの支払い額はアップル年間収益の15~20%に
J-CAST 会社ウォッチは「米司法省が切り込んだグーグルの『抱き合わせ』 連邦地裁提訴の背景は」(2020年10月31日付)で詳報したように、米司法省などはグーグルを20年10月に提訴した。
公判準備の段階で、すでに原告・被告のつばぜり合いが展開されている。地裁は事前にグーグルの主張を一部受け入れ、グーグルが高シェアを握る検索サービスで自社のサービス(旅行など)を優遇している――などいくつかの点で訴えを棄却済みだが、公判の最大の焦点は、従来から注目されている検索を巡る契約だ。
グーグルはスマホメーカーと、自社の検索サービスを標準に設定(初期設定)してもらう契約を結んでいるが、これは検索エンジン「Bing(ビング)」を手掛けるMSなどの競合を不利な状況に追いやり、競争を阻害したというのが司法省の主張だ。
スマホのOSは、アップルのiPhone(アイフォーン)が独自の「iOS」であるほかは、グーグルの「アンドロイド」がほぼ市場を制覇している。問題の検索エンジンの初期設定の契約は、アンドロイドのスマホだけでなく、アイフォーンも含む。というより、アップルとの契約こそ問題かもしれない。
グーグルにとって、OSとしてはライバルになるアップルだが、検索エンジンでは最大の顧客ということだ。司法省は公判で、アップルとの契約でグーグルが毎年80億ドル(約1.2兆円)~120億ドル(約1.8兆円)の巨額の支払いをしていると指摘している。
独自の検索エンジンを持たないアップルに巨費を支払い、ウィンウィンの関係を築いて共存共栄しているということだ。
ちなみに、アップルは米国のモバイル機器市場の約6割を占め、グーグルからの同契約の収入はアップルの年間利益の15~20%を占める。
一方、グーグルはアイフォーンなどを押さえることで世界の検索市場で9割のシェアを握っている。グーグルの持ち株会社「アルファベット」の2022年の売上高約2828億ドル(約42兆円)の約6割は検索連動の広告が支えているとされる。
グーグルは「利用者は初期設定を簡単に切り替えることができる」などと、こうした契約が排他的ではないと繰り返し主張している。