「この会社に入って本当によかった!」チームワークが優れた日系大手企業ランキング 社員の結束力で世界と戦う...2位日揮HD、3位中外製薬、1位は?

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   日本経済を長年支えてきた日系大手企業が岐路に立たされている。終身雇用、年功序列といった日本型企業の特徴が、若手の活躍を阻む大きな要因と批判的に見られているからだ。

   そこで、就職・転職のジョブマーケット・プラットフォーム「OpenWork」を運営するオープンワーク(東京都渋谷区)が、会員ユーザーのクチコミ投稿から調査した「新卒社員が評価する『チームワークが優れた日系大手企業ランキング』」を、2023年9月21日に発表した。

   チームワークの重視は、日本型企業の美点でもある。若手社員がその良さを感じながら成長実感も得られる会社には、どんな魅力的な企業風土があるのだろうか。

  • この会社に入って本当によかった(写真はイメージ)
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結婚・出産など社員のライフイベント大事に、「古き良き」日本企業

   OpenWorkは、社会人の会員ユーザーが自分の勤め先の企業や官庁など職場の情報を投稿する国内最大規模のクチコミサイト。会員数は約585万人(2023年8月時点)という。OpenWorkでは、企業の評価を「待遇の満足度」「社員の士気」「風通しの良さ」「20代成長環境」など8つの項目を5段階で評価している。

   今回の調査では、設立50年以上の歴史を持つ日系企業を対象に、20~30代の新卒社員が投稿した会社評価リポートから「風通しの良さ」「社員の相互尊重」の2に絞って合計スコアを集計、若手社員がチームワークの良さを感じながら成長できる企業の特徴を調べた。

   その結果、1位に国内最大の海運会社の日本郵船(東京都)、2位に建設・エンジニアリングの日揮ホールディングス(横浜市)、3位に製薬大手の中外製薬(東京都)、4位に国内最大の広告代理店の電通(東京都)、5位にデジタルテクノロジーのマクニカ(横浜市)。

   6位に電機メーカーのブラザー工業(名古屋市)、7位にソフトウェアのアシスト(東京都)、8位に総合化学の旭化成(東京都)、9位に不動産開発の森ビル(東京都)、10位に大手不動産の野村不動産(東京都)という結果になった【図表1】。

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(図表1)新卒社員が評価する「チームワークに優れた日系大手企業ランキング」TOP30(オープンワークの作成)

   また、上位30社を業界ごとにみると、「メーカー・商社」が最も多い11社を占め、ほかに「不動産・建設」「IT・通信・インターネット」「人材支援」「ホテル」業界などの企業が並んだ【再び図表1】。

   ランキング上位30社の平均スコアをみると、「風通しの良さ」は5点満点中3.90点(全企業の平均3.35点)、「社員の相互尊重」は3.73点(同3.31点)となり、合計スコアは10点満点中7.62点(同6.66点)となった【図表2】。「風通しの良さ」と「社員の相互尊重」の合計スコアだけで、全企業の平均に1点近い大差をつけての高評価となったわけだ。

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(図表2)「チームワークに優れた日系大手企業ランキング」TOP30の平均スコア(オープンワークの作成)

   上位30社の社員のクチコミには、こんな特徴がうかがえる。

(1)緊密な人間関係を築こうとする風潮が強く、結婚や出産など社員のライフイベントを大事にする「古き良き」企業の姿をある。

(2)その一方で、単に社員同士の仲がいいだけでなく、年功序列なのに若手にも裁量権がある。

(3)上司と部下が分け隔てなく議論を尽くし、社長や役職者にも「さん付け」で呼ぶ文化がある。だから若手が意見を言いやすく、チャレンジや成長を促している。

(4)「若手だから」と意見を軽んじられることのないボトムアップな社風が、「チームワークがよい」と高く評価される理由になっている。

社長や部長も「さん」付けで呼び、意見が言いやすい

職場のチームワークがいい(写真はイメージ)
職場のチームワークがいい(写真はイメージ)

   具体的にクチコミをみていくと――。

日本郵船「組織力を重視している。社員のギラギラした競争意識はまったくなく、組織として成果を出すには、という意識が強い。定期的なジョブローテーションをほとんどの人が経験するため、基本的に上下関わらず聞きやすく、新しく着任した人が馴染みやすいような環境がある」(総合職、女性)
日揮ホールディングス「風通しは非常によく、上下関係や学閥などのしがらみはありません。海外企業とのやり取りが多いことも関係しているのか、思ったことは立場に関係なく発言することができ、発言することを求められる(営業、女性)
中外製薬「組織体制については、以前は部署間でのコミュニケーションに一定のハードルが存在していたものの、最近はさまざまなツールを用いて、壁を取り払う取り組みがなされている。また、自己成長を重んじる文化があり、そのためのコンテンツは非常に豊富に用意されている。
自己成長のためならばプライベートの時間も活用していく意思のある人であれば、まったく問題なく馴染める。また、全社的に悪い意味で外れ値のような人材があまりおらず、どの部署に行っても優秀な人材が揃っている」(営業・マーケティング一般、男性)
電通「自由な風土ではある。新しくビジネスを作るということに対するハードルもあまり高くない。一方で、仕事のノウハウは体系化されておらず、見て学ぶスタイルが一般的。自力で成長できる人間には向いているが、自走できない人間には向かない環境だと思う」(営業、男性)
マクニカ「風通しが非常によく、役職がある方に対しても『さん』づけで呼んでおり、意見が非常に言いやすい。権限委譲の文化が根付いており、若手のうちからさまざまなチャレンジングな業務に挑戦できる。仕事に熱心で優秀な方が多く、刺激を受けながら働くことができる」(エンジニア、男性)
やる気がモリモリ出る(写真はイメージ)
やる気がモリモリ出る(写真はイメージ)
ブラザー工業「チャレンジを推奨し、それによる失敗は許容される風土である。過去の製品の失敗例もうまく別の製品開発に展開されており、その点は社風として認識されている。人当たりの柔らかい社員の人が多く、フロアの居心地もいいほうと思われる」(開発、男性)
アシスト「若手でも手を上げれば色々な仕事に挑戦できる。また、大企業との取引も多いためCMや広告、雑誌でも取り上げられるようなシステムの提案や支援も提案ができる。
当然だが、ただ待っているだけでは仕事は降ってこないため、上司やキーマンに『やりたいこと』を正しくアピールできるかが、楽しく仕事ができるかを大きく左右する。これができているメンバーは社内でも大きく活躍しているが、できていないメンバーは何年も停滞している印象」(エンジニア、男性)
旭化成「個人の裁量に任される傾向が強く、やりがいを感じられる。自分で考え動けない人間は向いていない会社」(事業開発、男性)

   こういった案配だ。

社内イベント多く、和気あいあい過ぎる雰囲気は時代に逆行?

職場仲間との飲み会が多い(写真はイメージ)
職場仲間との飲み会が多い(写真はイメージ)

   ところで、1社に長く勤める時代ではなくなったからこそ、社員同士の家族のような結びつきは敬遠され、割り切った人間関係を求める傾向が強くなっている。

   実際に上位30社のクチコミからも、「社内イベントが多く、和気あいあいの雰囲気は時代の流れに反している」「昔ながらの飲み会文化が残っている」といったマイナスの指摘もあった。

   こうした時代の変化に対して、「チームワークの良さ」が評価されている上位30社は、どう変わろうとしているのか。社員のクチコミから探ると――。

日本郵船「海運業界全体の不況、コンテナや自動車といった主力事業の採算悪化などに伴い、コスト管理や新しい事業への投資等に真剣に目を向けるように変化していることは感じる」(管理部門、男性)
日揮ホールディングス「2021年に制定した2040年ビジョンに従って企業変革を進めている。90年以上の伝統を誇る企業でありながら自由闊達で、挑戦をよしとする文化がある」(経営企画、男性)
東急不動産「もともと年功序列の考え方がかなり強かったが、近年は実力主義の考え方を取り入れつつあり、会社として変革期を迎えている印象を受ける」(総合職、男性)
ソニーグループ「他の企業との比較ではないが、組織は大企業特有の縦割りの名残がある。大きな改変を繰り返して、横のつながりも少しずつ強化されている。最近は優れた企業の買収やグローバル人材の確保に力を入れており、研究開発の一部部門は会議が英語化されるなどしている」(研究開発、男性)

   それぞれの会社が、社員の結束力の強さといった日本企業が築き上げた強みを生かしながら、若手のやる気を大いに活用するシステムを取り入れ、時代の大変化に立ち向かっている姿が浮かんでくる。

   調査はOpenWorkに投稿された、設立50年以上・従業員1000人以上の日系企業が対象。新卒入社した20~30代の現職社員による会社評価レポート7万5038件を集計・分析した。(福田和郎)

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