東京商工リサーチ(東京都千代田区)は2023年9月15日に、第12回「全国女性社長」調査の結果を発表した。
東京商工リサーチのデータによると、2023年の女性社長は61万2224人で前年比4.8%増、調査を開始した2010年(21万2153人)から13年間で約3倍に増えた。
また、「女性社長率」(全社長数に対する女性社長数の割合)を地区別でみた場合、1位は「近畿地方」で「15.88%」で、前年比0.34ポイントの上昇だった。そのほか、女性社長の数で多い都道府県では、1位は「東京」(15万5210人)、2位が「大阪」(5万9655人)となっている。
女性社長の多い都市 1位は東京都15万5210人、2位は大阪府5万9655人、3位は神奈川県3万9434人
この調査は、東京商工リサーチのもつ約400万社の経営者情報(個人企業を含む)から、女性社長(病院、生協などの理事長を含む)を抽出し、分析したもの。ちなみに、調査は今回が12回目(前回2022年11月7日発表)となっている。
はじめに、女性社長数と女性社長率(全社長数に対する女性社長数の割合)によると、2023年の女性社長は61万2224人で前年比4.8%増。調査を開始した2010年の21万2153人と比較すると、13年間で約3倍に増えている。
女性社長率は14.96%となり、前年比で0.26ポイントの上昇となり、ゆるやかに女性の社会進出が進んでいることがわかる。
東京商工リサーチは「政府や自治体が推進する創業支援など、女性の活躍推進の取り組みが結実している。ただ、女性社長数の増加は起業だけでなく、同族経営で高齢の代表者から妻や娘への事業承継も背景にあるとみられる」としている。
続いて、都道府県別の女性社長数では、1位は東京都で15万5210人、次いで2位は大阪府の5万9655人、3位は神奈川県の3万9434人となり、人口の多い大都市が上位を占めている。
一方で、最小は島根県の1697人、次いで、鳥取県の2158人、福井県の2235人が続いた。
また、2023年1月1日現在の住民基本台帳人口に基づいた「女性人口10万人当たり女性社長数」では、最多が東京都の2203人で、唯一2000人を超えた。次いで、大阪府が1309人で、沖縄県1308人。
一方、最少は新潟県453人。次いで、秋田県479人、山形県480人、島根県497人となり、この4県は500人を下回っている。
東京商工リサーチは、「人口が多く、市場の大きな大都市圏は、女性社長が起業しやすいサービス業を中心に独立を夢見る女性を惹きつけているようだ」としている。
都道府県別の女性社長率では、トップは沖縄県で「20.58%」。飲食業などに女性社長が多いことなどから、全都道府県で唯一20%を越えた。以下、東京都は「16.98%」で前年比0.22ポイントの上昇、茨城県は16.77%で0.71ポイントの上昇となった。
一方、最小値では、新潟県で「9.40%」、山形県で「9.68%」の2県が10%を割り込んでいる。
つぎに、地区別の「女性社長率」をランキングにしてみると、9地区すべてで前回からランキングに変動はなかった。1位は「近畿地方」で「15.88%」となり、前年比0.34ポイントの上昇。2位は関東の「15.71%」で2.7ポイント上昇、3位は「九州」の「15.55%」で1.4ポイントの上昇となった。
一方で、「女性人口10万人当たり」の女性社長数は、最多が関東の1195人。次いで、近畿が1008人で続き、近畿は初めて1000人の大台に達したという。3位は九州の863人、4位は中国775人、四国は5位で738人という順番になった。
東京商工リサーチは「関東は最も多い東京都が前年比2.5%増にとどまったのに対し、近畿の2府4県は平均5.4%増と堅調に推移し、女性社長率トップを維持した」としている。
さらに、産業別の女性社長数・女性社長率によると、女性社長数の最多の産業は「サービス業他」の30万840人が突出している。
構成比では、「サービス業他」だけで「49.1%」を占め、喫茶店や食堂などの飲食業、美容業やエステティック業など、女性が活躍しやすく、小資本でも起業が可能な業種が中心となっているようだ。
また、女性社長率のトップは不動産業で「24.82%」となり、前年比0.34ポイントの増加。次いで、サービス業他が「18.85%」で続くほか、小売業の「15.49 %」、情報通信業の「13.25%」が続き、7産業で10%を超えている。
一方で、女性社長率が一桁台にとどまったのは、建設業の5.35%は前年比0.02ポイントの増、農・林・漁・鉱業8.03%で前年比0.03ポイントの増、運輸業の9.20%で0.13ポイントの増の3つだった。
女性社長の出身大学ランキング 3位は早稲田大学、2位は慶應義塾大学、では1位は?
女性社長の「名前」のランキングがユニークだ。1位は「和子」の6184人だった。次いで、2位が「幸子」の5745人、3位が「洋子」の5575人、4位が「裕子」4877人、5位が「陽子」の4236人という結果だった。
東京商工リサーチでは「『和子』がトップの背景には、昭和初期から昭和27(1952)年頃まで生まれ年別の名前で最も多かった影響が伺われる。『幸子』『洋子』なども人気が高かった」とコメントしている。
女性社長の出身大学のランキングでは、日本大学が480人でトップに立った。次いで、2位が慶応義塾大学の393人、3位には前年4位の早稲田大学が334人、4位は東京女子医科大学で316人(同317人)と、順位が入れ替わっている。
以下、5位は青山学院大学で242人、6位には同志社大学の190人、7位は日本女子大学で187人。
ランキングが下がった大学では、共立女子大学が14位から16位に順位を下げており、女子大に鈍化傾向があるようだ。
東京商工リサーチは、調査を受けて、以下のようにコメントを寄せている。
「女性目線での商品開発や新たな市場開拓などを通じて、経済活性化につながることが女性社長には期待されている。
政府は6月5日、男女共同参画会議で示した『女性活躍・男女共同参画の重点方針2023』で、女性起業家を10年で20%まで引き上げる目標を掲げた。
ただ、男女の役割分担に対する先入観から、家事や育児など女性の社会進出を阻む要因は未だ蔓延っている。
そのためにも創業や事業承継の支援と併せて、社会意識をどこまで変えられるか本気度が問われている」