一人ひとりの社員が、自分の将来をプロデュースできる会社をめざす
前川 御社は早期離職は多くないとのことですが、社員のキャリア自律を奨励していくと、個人の進みたいベクトルと会社の向かうベクトルにズレが生じ、離職につながるケースも出てきます。このような課題には、どう対応していかれますか?
大原さん 会社として、人材マッチングのためのプラットフォームをつくりたいと考えています。
まず社員の持っているスキルを可視化して、自社が今持っている人的資本のポートフォリオをつくる。一方で、会社の戦略として求める人材のポーフォリオをつくる。すると、そこにギャップが生まれます。
そこで、まず社員のリスキリングでギャップを埋めることを考える。どうしても短期に人材が必要なら、中途採用でいく。また、数年待てる課題には、新卒のポテンシャル採用で採った若手育成で対応する。そうした対応の循環を回したいと思っています。
浅井さん 人材マッチングとは、需要と供給を一致させることです。
私の仕事は、社員が望む自分のキャリアの方向に行くための確率を上げる作業であり、どうしたらそこへ行けるかを助けることです。自分が行きたい部署が求めるスペックを上回るスキルを身に着けておけば、その部署はその社員を放っておきません。特に、若手にはそう話しています。
大原さん これまでのヒューマンリソースの考え方は、どうしても人材管理の発想でした。よって、各社員の過去のデータを入力し、こんな経歴や資格を持っているから、今後はこうした仕事ができるだろうという見方でした。
しかし、これからは未来からインプットしていくのです。まず、会社の向かう方向を見据えながら、各社員が自分はどうなりたいかを考えて、それに向けて自分の未来をプロデュースしていける会社にしたい。
そのために人事の側では、本人が次にこういうポストに就きたいのなら、こういうスキルを身につけなさいとか、この研修を受けるといいなどのレコメンドを出し、成長を後押しする。異動も人事主導ではなく、各部署の公募と本人の手上げで行われるほうが望ましい。今も社内フリーエージェント制度はありますが、相互マッチング方式が主流になれば理想です。
前川 なるほど。いわば社内に転職マーケットをつくるイメージですね。