離職者のカムバックも、積極的に受け入れる
前川 NTTグループでは、大きな組織再編も進んでいますね。御社の人事制度改革の背景には、そうした環境変化に対する経営サイドの課題意識や危機感があるのでしょうか?
大原さん それも大きいですね。
社員にとって魅力ある職場であり続けるにはどうあるべきか、考えています。弊社は他社に比べ、離職率は高くない方だと思いますが、社員の処遇面とやりたいことが合致しなければ、今後は定着も難しいでしょう。
人材流動化の時代ですから、転職じたいは致し方ない。ただ、一度離職した社員が、また何年か後に希望すればカムバックできることにも取り組んでいます。
前川 カムバックと「さらり」と仰いましたが、それは伝統的な日本の大企業である御社にとって、かなりの方針転換ではないのですか?
浅井 公一さん これまでカムバック可能な仕組みは、出産・育児か配偶者の海外転勤など、事由が限定的でした。しかし、今はもう時代が違うだろう、ということです。
大原さん 若手や中堅の退職者には、その後も定期的に連絡してよいか意向を聴いています。OKなら、退職者の集いなどに誘い、互いの近況報告や情報交換を行います。そのなかで、また戻ってきたいと考える者も出てきて、その場合には積極的に受け入れています。
前川 退職者のアルムナイネットワークをつくり、カムバック社員の受け入れを仕組み化されているのですね。
今や多くの企業が、若手の早期離職に悩んでいます。私は十数年間、大学でキャリアデザインの正規授業を持っていますが、今の学生たちは必ずしも大企業に就職できたら安心とは考えていません。優秀層ほど、就職後も自分がその会社で成長できるか、労働市場で評価されるキャリア形成が可能か、考えながら働いている。
ですから、企業側も自社にただ囲い込もうとせず、若手が一度離職し他社も経験してみて、あらためて御社の良さが分かれば戻れるというのは、とても合理的ですね。