晩婚化の原因は、出会いの遅れか?交際期間が長引いたからか? あるいは、「見合い結婚」が減った影響もあるのか?【人口問題3】(鷲尾香一)

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   少子化は日本の抱える最大の問題と言える。未婚者の結婚や出産に対する考え方、既婚者の出会いと結婚、そして、出産や子育てに対する考え方は、少子化に大きな影響を与える。

   国立社会保障・人口問題研究所の2021年調査の「出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」から、今回は既婚者の現在の結婚、出産・子育て、仕事に対する考え方に焦点を当てる。

見合い結婚...1980~84年に24.9%→2005~09年に5.3%→19~21年に9.8% SNSなどネットの「出会い」からは増加傾向

   <未婚者が結婚相手に求める条件...2000年代に入って、男性は女性に「経済力」、女性は男性に「経済力」「容姿」求める割合高まる【人口問題2】(鷲尾香一)>の続きです。

   まずは、既婚者の出会いから見てみよう。調査時点から過去5年間に結婚した初婚どうしの夫婦について、夫妻が初めて知り合ったときの平均年齢は、男女ともに2010年頃から徐々に遅くなり、男性は2015年に26歳台に、女性は2010年に24歳台になっている。

   一方、結婚した年齢は徐々に晩婚化の傾向が表れており、男性は2005年に29歳台に、2015年には30歳台に突入した。女性は1997年に26歳台、2005年に27歳台、2010年に28歳台、そして2015年に29歳台になっている。(グラフ1)

   平均交際期間は、1987年には2.6年だったが、1992年には3.0年に2010年からは4.3年に延びている。これは、出会いの年齢が1987年から2021年までに男性0.7歳、女性2.1歳延びたのに対して、結婚年齢が男性2.4歳、女性3.8歳延びたことによるものだ。出会いの年齢よりも結婚年齢の方が延びている点から、より結婚に慎重になっていることがうかがわれる。

   では、出会いから結婚への形態はどのようなものだったのかを見ると、1985~89年に「恋愛結婚」が80%台に増加して以降、2015~18年までは80%台で推移したが、2019~21年には74.8%に減少した。

   一方、「見合い結婚」は1980~84年には24.9%だったが、その後は減少が続き、2005~09年には5.3%にまで減少したが、2015~18年には再び増加し、2019~21年には9.8%にまで増加している。

   特徴的なのは、2015年から調査を開始したSNSやマッチングアプリなどのネットでの出会いによる結婚で、2015~18年は6.1%だったが、2019~21年には15.1%にまで増加している。(グラフ2)

   この背景には、新型コロナの影響により、外出自粛やテレワークの推進による出会いの減少などの影響があり、見合いやネットでの出会いから結婚に進展するケースが増加したものと思われる。

   結婚を決めたきっかけは、妻の初婚年齢が25歳未満では「子どもができた」が33.8%で第1位だが、25歳以上になると、「年齢的に適当な時期だと感じた」が25~29歳で67.1%、30~34歳で70.5%、35歳以上で60.2%と圧倒的に多く、第1位となる。

不妊の「検査・治療中」「検査・治療経験あり」夫婦...前回18.2%→22.7%に微増

   さて、子どもの数や育て方など子どもに関連した考え方を取り上げる前に、夫婦の性生活と避妊、不妊治療について取り上げる。

   妻の年齢50歳未満の夫婦全体で見ると、過去1か月間に夫婦間で性交があった夫婦の割合は37.9%、なかった割合は58.5%だった。20代では6割を超えているものの、30代では5割を下回っている。(グラフ3)

   過去1か月間に性交がない場合を「セックスレス」と定義すると、該当するケースは、妻50歳未満の初婚どうし夫婦の約6割となる。

   過去1か月間に夫婦間で性交があった夫婦に、避妊の有無をたずねると、避妊した夫婦は全体の58.3%だった。妻の年齢別にみると、30歳未満が63.9%でもっとも高く、30代前半が52.5%でもっとも低かった。

   不妊について心配したことがある夫婦の割合は、全体で見ると前回調査の35.0%から39.2%へと増加した。2010年に3割を超え、2021年には4割近い夫婦が不妊の心配をしたことがあるとしている。

   実際に不妊の検査または治療経験がある夫婦の割合は、「検査・治療中」と「過去に検査・治療経験あり」の合計では、前回調査の18.2%から22.7%に増加した。これは4.4組に1組の夫婦が不妊の検査・治療中か、経験したことになる。(グラフ4)

   既婚者の出会いは新型コロナの影響もあり、ネットでの出会いが増え、徐々に晩婚化が進行している。さらに、不妊を心配する夫婦が増えており、不妊検査・治療を受ける夫婦も増加している。こうした傾向もまた、少子化が進行する一要因になっているのかもしれない。

   次回は、子どもの数や育て方など子どもに関連した考え方を取り上げる。【第4回につづく】

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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