自動車を個人で所有せず、複数の人で共同利用する「カーシェアリング」がいよいよ広がっている。
自動車自体を購入する必要がないうえ、駐車場代や税金、保険などの費用負担もなくなり、値上げラッシュの中で家計の負担軽減の一環として関心が一段と高まっている。ガソリン代の高騰も追い風になっているようだ。
車両台数は2010年の約1300台→23年には約5万6000台...今後も増加の見通し
カーシェアリングは、事前に会員登録をし、車を使いたい時にスマホなどから予約して利用する。1980年代後半に欧州で始まったとされる。
日本では2010年代から急速に広がってきた。公益財団法人、交通エコロジー・モビリティ財団によれば、2010年の車両台数は約1300台、カーシェアリングサービスを利用する会員数は約1万6000人だったが、2014年には車両台数が1万台を超え、会員数は40万人台に乗せるなど、その伸びは著しい。
ここ数年は利用が一段と加速しており、23年3月時点の車両台数は前年同期比8.6%増の約5万6000台、会員数は同18.8%増の約313万人に上った。今後もさらに増加が続く見通しだ。
「毎日車に乗るわけではない、断然メリット大きい」車の保管場所も年々増加、環境負荷低減で、若者を引き付ける
利用が拡大する最大の理由は、自動車を所有するのに比べ、金銭的な負担が小さいことだ。ある利用者は「東京都内で駐車場を借りると、とんでもない金額が必要になる。車には毎日乗るわけではないので、カーシェアリングの方が断然メリットが大きい」と話す。
特に最近は、ガソリン価格の高騰が利用を後押ししているという。原油価格の上昇や円安などからガソリン価格は9月に入って過去最高を更新している。
カーシェアリングサービスは基本的に、15分でいくらなど時間や距離によって料金を決めている。元々ガソリン代も含む料金で、このガソリン高のなかでも「現時点では企業努力で値上げしない」(大手業者)。
このため、ガソリン代を気にせず利用できるというわけだ。「ガソリン高騰を機にカーシェアリングに興味を持つようになった人も増えている」と業界関係者は話す。
また、会員数が増えているのは、サービスが利用しやすくなっていることもあるようだ。車両の保管場所(デポジット)は年々増加し、2023年3月時点では前年同期比11.9%増の約2万3000か所にのぼる。
レンタカーを借りる場合に比べ、利用する際に面倒な手続きが必要なく、ガソリンを満タンにして返す必要もないことなども魅力といえるようだ。
さらに、カーシェアリングは車の数を減らすうえ、不必要な運転を抑える傾向が強まるなど、マイカーに比べ環境負荷を低減する効果があるとされる。これも、若い人を引きつけている一因と言われる。
同財団によれば、会員になった人は入会前より公共交通機関や自転車を使用する機会が増えたという。
利用者急増で「乗りたい時に車がない」 ガソリン代高騰でも、現行料金維持できるかも課題に
ただ最近は、利用者の急増によって、「乗りたい時に空いた車がないというケースも増えている」(利用者)との声が少なくない。
また、ガソリン代の高騰が続く中、価格転嫁をせず、現在の料金を維持することができるかは見通せない。
料金次第では客離れにもつながりかねず、今後の成長への課題は少なくない。(ジャーナリスト 済田経夫)