2008年度開始...「行き過ぎ」批判受け、重ねるルール改定 「地場産品」に限定、返礼品調達費3割以下...
ふるさと納税の問題点を理解するために、仕組みを確認しておこう。
自ら選んだ自治体への寄付のうち2000円を超える部分が、所得税と住民税から原則全額控除される制度で、2007年に第1次安倍晋三政権の菅義偉総務相(当時)の発案で創設され、2008年度から始まった。
15年度に控除枠が増え、確定申告が容易になると、返礼品による寄付金獲得競争が本格化した。だが、細かい規制がなかったため、アマゾンの商品券を返礼品にするなど、行き過ぎに批判が高まった。
総務省がルール改正に乗り出し、19年度からは、返礼品を「地場産品」に限るとともに、その調達費用や送料など自治体が寄付の募集に使える経費は寄付金額の5割以下(返礼品の調達にかかる費用だけでは3割以下)とすることなどが条件に加えられた。
では、具体的な問題点を順にみていこう。
自然条件や歴史により、どの地域でも返礼品になりうる特産品が豊富にあるとは限らない。もちろん、ふるさと納税が特産品の開発に取り組む契機になることはあり得るが、そんなに簡単なことではない。
また、「せっかくの納税を手数料にくわれたくない」と仲介サイトを使わない自治体は、特産品があっても、ふるさと納税が少額にとどまるのが実態だ。
◆10月から新ルール...熟成肉・精米は、同一都道府県内産のみ
特産品の開発に無理が出ていると思しきケースもある。
総務省は23年6月、熟成肉か精米を返礼品にする場合は、同じ都道府県内で生産されたものを使わなければならないとの新ルールを打ち出し、10月から実施する。
熟成肉の場合、「熟成」の定義が困難なため、熟成という「付加価値」を正統に付けたのか、「にわか返礼品」に仕立てるために一定期間、地元に置いた程度なのか、区別がつかないというのが理由だ。わざわざ厳格化するのは、いい加減なケースがあったということだろう。
ただ、これにはうがった見方もある。
ふるさと納税額5位の泉佐野市の代表的返礼品の一つが熟成肉で、同市は返礼品規制強化の前、駆け込み的に商品券などで多額のふるさと納税をかき集め、これについての総務省の行政処分を巡り裁判になり、最高裁で総務省が敗訴したという「因縁」がある。
このため、熟成肉の規制を巡り、総務省が泉佐野市に意地悪をしたのでは、との見方もささやかれるが、真偽は不明だ。(J-CASTニュース「ふるさと納税から返礼品が消える? マスコミ論調と総務省の苦悩」参照)