みなさん、こんにちは。今回は、部下の言葉にイラッとしてしまったときにどう対処するか、というテーマでお話していこうと思います。
みなさんは、部下からの言葉についイラッとした経験はありますか。部下をもつ方なら、一度は直面する感情ではないでしょうか。
実は私も部下から思ってもいなかった言葉を返され、「何でそんなこと言うんだ」と言い返したくなった経験があります。
今回は次のシチュエーションを想定して、どのように上司として対処したら良いのかを考えていきましょう。
感情に流されず、自分でコントロールする
<部下からの言葉に「イラッ」と...どう対処する?【リーダーの「コミュ力」vol.2 前編】>の続きです。
私も昔は感情に流されていましたが、いまは感情に流されずに自分をコントロールすることができるようになりました。なぜ感情に流されない自分になれたのか。それは、人の行動のメカニズムを体系化した、「全行動」という選択理論心理学の概念を知ったからです。
「全行動」は4つの要素から構成されます。「行為」「思考」「感情」「生理反応」です。このうち、「行為」「思考」は直接コントロールできるもの。「感情」「生理反応」は直接コントロールするのが難しく、「行為」と「思考」を挟むことによって、間接的にコントロールできるものです。
今回の例に戻ってみましょう。上司が抱いてしまった「イラッ」は「感情」です。なので、直接コントロールすることは難しいものです。つまり、「行為」と「思考」に焦点をあてます。
とはいえ、最初はどのような「行為」と「思考」を取ったらよいのか、イメージしづらいですよね。私であれば、今回のケースでは次のような「行為」と「思考」を取ります。
「行為」の場合だったら、私は、「なるほどね」「そういう考え方もあるよね」と言って、一言呼吸置きます。そうすることによって、いったん自分を冷静にすることができます。また、時間を置ける状況であれば、席を立ってリフレッシュするのも効果的です。
「思考」の場合は、発言の背景によって変わってきます。
たとえば、部下Bくんに資料を作るための知識が足りなかったのであれば、「商品知識を学ぶ勉強会を企画したほうがいいな」と考えるでしょう。
頼んだ仕事に対して、主体的に取り組まないという仕事への姿勢がテーマであれば、「もっとBくんが主体的に仕事に取り組めるような工夫をしてみよう」と考えます。
もしくは、急な依頼を出した自分の依頼の仕方が雑だったのであれば、「Aくんが理解しづらい説明をしちゃったかな」と振り返るでしょう。
部下の成長につなげるという視点をもとう
いかがだったでしょうか。「イラッ」という「感情」の原因と、「行為」と「思考」に焦点をあてることを説明してきました。
しかし、このような視点をもてるのは、根底にある考え方があるからです。それは、「マネジメントの目的は部下の成長であって、上司の自己満足ではない」という考えです。
自分の評価を上げることや、手段を選ばずに業績を上げることがマネジメントの目的ではありません。部下の成長を促し、実力を付けていきながら責任範囲の拡張をしてもらうこと。その延長線上にチームの目標達成や会社の発展をつくること、これがマネジメントの目的です。
このような視点をもつと、部下の課題として見えてきた事柄に対して、「どうしたら部下は成長していけるか」という視点で関わることができます。
自分の理想と現実とのギャップはどうしても生まれてしまうものです。まずは、部下からどんなことを言われたとしても、「この機会を通して、部下のどんな成長を創り出していけるだろう」と考えられる上司に成長していきましょう。(橋本拓也)
【プロフィール】
橋本 拓也(はしもと・たくや)
アチーブメント株式会社 取締役営業本部長
2006年アチーブメント株式会社に入社。新規事業として家庭教師派遣事業を立ち上げたのち、医師・弁護士・会計士などの専門職業人、経営者やセールスパーソン等の目的・目標達成の支援を行うパーソナルコンサルタントとして活躍。2017年同部門の東日本エリア担当マネジャーを経て、2021年執行役員、2022年取締役に就任した。100名以上のメンバーマネジメントに携わる傍らで、『頂点への道』講座 アチーブメントテクノロジーコース・ダイナミックコースのメイン講師を担う。これまで各種研修で担当してきた受講生の数は2万名を超える。